現在、ISS(国際宇宙ステーション)では複数のロボットが活躍しているが、このほど日本とドイツのロボットが手をつなぐ共同作業の可能性を実証する「ICHIBBAN」ミッションが成功した。これはアポロ計画、ISS計画に匹敵する技術革新とのことだ。
JAXAはInt-Ball2という船内用のドローンロボットを運用している。クルーが行う実験を撮影して地上に映像を送るのが目的だが、リアルタイムで船内の立体マップを作って安全に自律移動できる。またDLR(ドイツ航空宇宙センター)は、CIMONという、自然言語処理と画像認識の機能を備え、クルーと会話をしながら活動の支援ができるロボットを運用している。ICHIBANとは、「IntBall-2 CIMON Hovering Intelligences Building AI Network」の略だ。
「ICHIBAN」ミッションの目標は次の3つ。
・ISSでリアルタイムで運用されている複数のロボットが、クルーと協働でタスクを実行できるかを実証する。
・ISS内の異なるモジュール・ネットワークに属するハードウェア間で相互通信を実現する。
・国際協力ミッションをとおして有人宇宙活動および宇宙ロボティクスに関するアウトリーチに貢献する。
実証実験は、船内にものを隠して、それを2台のロボットが連携して見つけ出すというものだ。まずはISS内にInt-Ball初号機とそのターゲット・マーカー、CIMONの付属品であるルービック・キューブを隠した。次に、大西卓哉宇宙飛行士が欧州実験棟「コロンバス」にて、CIMONとの会話でInt-Ball2を操作し隠したものを探させた。Int-Ball2はその映像をCIMONに送り、それを見た大西飛行士は見事にそれらを見つけることができた。
Int-Ball2は、地上の研究者が遠隔操作するよう作られていたが、今回初めて、船内のクルーも操作できるようになった。
CIMONはIBMのAI技術「watsonx」を採用しているが、ICHIBANミッションでは、会話をInt-Ball2のコマンドに変換して伝えるという大きな役割を果たした。IBMのクライアント・エンジニアリングDACH統括責任者のマティアス・ビニオク氏は、IBMはアポロ計画からISSにいたる数十年間にわたる技術革新を支えてきたが、ICHIBANミッションは「AIとロボティクスを組み合わせて宇宙飛行士の能力と安全性を向上させるという、次なる決定的な一歩を示すもの」と感想を語った。
またJAXAの有人宇宙技術センター研究開発員の山口正光ピヨトル氏は、このミッションは「技術的な相乗効果を実証しただけでなく、国際協力ミッションとしての両機関の人材交流をはじめとして連携をより強めることができた」と話している。



