食&酒

2025.08.22 14:15

中華の鬼才「茶禅華」川田智也の軸にあるシンプルな奥義

南麻布にある「茶禅華」

南麻布にある「茶禅華」

厨房へ入るときには、道場に入るような気持ちで必ず一礼して足を踏み入れる。「茶禅華」オーナーシェフの川田智也氏は、長く空手をやっていた影響か、厨房は道場のごとく神聖な場所であるのだという。

「和魂漢才」を標榜する「茶禅華」は、日本の食材を漢の技法で表現した繊細にして大胆な料理で、中国料理としては日本で唯一のミシュラン三つ星を獲得している。

オーナーシェフの川田智也
「茶禅華」オーナーシェフの川田智也

川田氏は、幼い頃に家族で円卓を囲んで食べた、美味しく、楽しく美しい風景が忘れられずに、中国料理ありきで料理人になることをめざしたのだそうだ。調理師学校に通いながら、当時、斬新な料理でその名を馳せた「麻布長江」にアルバイトで入り、調理師学校卒業後、正社員として8年間、店主である長坂松夫氏の薫陶をうけた。

師から学んだ一番大きなことは、中国料理の持つ長い歴史を含め、壮大な文化、ロマンだという。当時、長坂氏は弟子たち皆に、古書や原書にあたることを盛んにすすめた。なかでも必須は「随園食単」。中国料理の名著で、川田氏は神田の古本屋街を駆け回って探したそうだ。

「やっと手に入れても、読むだけの頭でっかちではダメ、実践してこそなんぼだと言われ、何度も何度も試しました。今でも、古い資料からは創造力が沸きますね。特に、写真のない文字だけのものは、空想力がかきたてられます」と川田氏。

一方、研修や旅行で何度も中国本土に行かせてもらい、現地で出会った料理を日本の食材でどのように表現するかの難しさを身をもって学んだ。そうした経験を通して、日本の文化や食材に関しても、もっと知識を身につけなければだめだと気づいた。

それから、日本料理の修業を積みたいと考え、いくつもの店を回った。ちょうど夏の時期に、「日本料理龍吟」の鱧、鮎、鰻の3本柱に脳天を撃ち抜かれるほどの衝撃を受け、「修業させてください」と、主人の山本征治氏に申し込んだと言う。

その後3年間を東京の龍吟で過ごし、2年は台湾の「祥雲龍吟」で副料理長を務めた。この2年間がまたとない財産になったことは言うまでもない。

「休みの日には台湾の料理を食べ歩き、お茶に関する見識を深められたことも大きな収穫でした。台湾の素材で日本料理を作るという、今とは逆のことをやってきたわけですが、そのためにはお互いの文化を知らなければならないという、文化交流の場でもあったわけで、それが、和魂漢才という、今の料理の柱になる考え方を作ってくれたのです」

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文=小松宏子

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