
帰国後、8年前に34歳で「茶禅華」をオープン。5年目に三つ星を取得した。星については、「意識しないと言ったらウソになりますが、できるだけ考えないようにした」という。「それよりも、目の前のお客様に最高の料理を出すことに集中することが大切ですから」。
ではなぜ、取得できたのか。「日本の食材のことを深く理解し、季節感、素材感、温度感に真剣にこだわっていることが強みだと思います」というのが本人の見解だ。最善の温度帯で提供するめに、どこまでをお客様がいらしてから調理をするのか。それこそ秒単位で真剣に取り組んでいる。
器にもひとかたならぬこだわりを持つ。台湾の故宮博物院で見た圧巻の器たち。漢、唐、南北朝、明、清の流れを見たときに、中国料理の歴史は、器の歴史とともにあったのだと言うことを改めて認識したという。日本料理が器ありきであることは龍吟でたくさん学んできたが、中国料理も同じであることは、新鮮な驚きだったという。現在の茶禅華では、現代の作家に和魂漢才の意図を説明して作ってもらっているものが7割、残りは、中国の古いものを使用しているという。
ところで、川田氏はこの4~5年、プラントベースを使った料理に取り組んでいる。
「日本料理や中国料理を勉強していると、自然と精進料理とは向き合うことになるのですが、それに加え、インバウンドのお客様が増え、ビーガンやベジタリアンを所望する人も増えてきました。そこで、これはいい機会と、メニューにも取り入れ始めたんです」
もちろんそこには、家畜の飼育による地球環境の劣化の問題への配慮もある。

今回紹介してくれた2点は、生麩と湯葉でスペアリブを表現した料理と、干し椎茸で鰻を模したもの。揚げ湯葉を骨に見立て、下味をつけた生麩を湯葉で包む。見た目はスペアリブにそっくりになる。それを油で揚げて、四川風のたれをからめて出来上がり。
もう1点は、干し椎茸を割いて網み、鰻のように見せかける。それに粉をはたいて揚げ、甘辛いたれを塗って仕上げたもの。炊き立てのご飯にぴったりの一品だ。どちらもボリューム感も満点で、一品料理としての完成度の高さにはうならせられる。

実は、こうした取り組みをより深めるために、茶禅華の毎週土曜日の賄いは、動物性のものを一切使わずに作るというお題を、副料理長以下の若手に課している。1週間の疲れがたまっている土曜日に、体にも優しくて評判もいいという。ちなみに取材した日は「ビーガンガパオライス」だった。
また、店のキッチンには、フレンチ、イタリアン、スパニッシュと様々なスタッフが修業に入っている。そこで必然的に文化交流が生まれ、その中から、茶禅華の新しい料理が誕生することもある。


