「社会のために働く」ということ
お金について学ぶなら、僕は皆さんにふたつの視点をもってほしいと思っています。
ひとつ目は、「ものの価値を、自分自身で決める」こと。価格は市場のなかで決まる数字にすぎず、自分の感じる価値とは違います。例えば、一杯500円のジュースを300円で飲めても、200円得したわけではありません。大切なのは、そのジュースが“おいしかったか”どうかです。200円得するのは、それを500円で転売したときだけです。
自分の幸せは、いくらお金を使ったかではなく、「どれだけ幸せになれたか」で決まる。お金はそのための“道具”に過ぎません。お金をモノサシにして価値を測ってしまうと、いつの間にか、お金が目的になってしまいます。
もうひとつは、「社会のために働く」という視点です。これまでなら「いい会社に入れば安泰」だったかもしれません。でも今は、会社もあなたを守ってはくれません。だからこそ、個人の力が試される時代になっているのです。
もちろん、自分の資産を増やすことも大切。でも、それ“だけ”を考えていても、誰も協力してくれません。人が他人のお金を増やすために協力したいと思うのは、おそらく家族くらいでしょう。
社会のために働くというのは、みんなの課題を解決するということ。それなら、協力してくれる仲間も現れます。自分が苦手なことがあれば、頼ることもできるようになります。
僕自身もそうでした。日本社会への危機感から本を書こうと思いましたが、文章を書いた経験がなかったので、最初はまったく書けませんでした。でも「社会の課題を解決するためなら」と、編集者をはじめ、多くの人が協力してくれました。
とはいえ、親世代は「とにかくいい会社に入りなさい」と言うかもしれません。でも、時代の前提は変わっている。だからこそ、お金や経済の仕組みを学ぶことが必要だと思って、『きみのお金は誰のため』を書いたのです。
投資にしても、今は「お金を出したい人」がたくさんいる時代です。だからこそ、「投資される側」になるほうが、ずっと有利。でも、それを知らずに、ただ金融機関のお客さんになるだけでは、もったいないと思いませんか。社会に目を向けて、味方を増やしていく。きっとそのほうが、生きやすいはずです。
田内 学◎2003年東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・ サックス証券入社。金利為替トレーダーとして16年間勤務。現在は講演や執筆を通じ社会的金融教育に従事。著書『きみのお金は誰のため』はビジネス書グランプリ2024総合1位獲得。


