キャリア・教育

2025.08.12 15:00

なぜ“仲間”がいると、お金が動き出すのか

Vectors Bang / Shutterstock.com

Vectors Bang / Shutterstock.com

「お金の正体」と「社会の仕組み」を解き明かし、2023年ベストセラー『きみのお金は誰のため』の著者・田内学。金融最前線を経て、お金は問題を解決しないという視点から新しい金融リテラシーと“仲間”の力を説く。


僕が『きみのお金は誰のため』という書籍を書いたのは、多くの人が「お金さえあれば、多くの問題を解決できる」と思い込んでいるからです。ひょっとしたら、この文章を読んでいる人のなかにも「だから将来は年収の高い仕事に就きたい」と思っている人がいるかもしれません。でも、お金自体には価値がありませんし、お金で解決できる問題もないですし、みんなでお金を貯めても意味がありません。詳しくは本を読んでもらえればと思いますが、お金の正体を知れば知るほど、「お金そのものを求めるよりも、社会の問題を解決していくほうが結果的にお金も集まってくる」と気づいてもらえるはずです。では、なぜ今、社会の問題を解決していくことを考えなければならなくなったのでしょうか。

お金で問題は解決できない

何より大きな理由が、「これまではあまり社会のことを考えずに済んでいたから」です。日本の経済が好調だった時代は、輸出産業も伸び、通貨は強く、社会には余裕がありました。地域には支えあう共同体が残っていましたし、都市では、終身雇用が当たり前の会社が共同体としての役割を果たしていました。会社や産業は国が守るという構造があり、ある程度、安定した社会が成り立っていたのです。

ところが今は、地域の共同体も昔ほど強くなく、終身雇用が崩れつつある会社にも頼れません。だからこそ、人はお金に頼りたくなります。2022年度から高校で金融教育が始まりました。金融機関から派遣される講師の話は、資産形成の話に偏りがちです。おそらく、年金制度の不安や昨今の物価高への備えとして必要だと思ったのかもしれません。でも、現在の物価高は円の価値が下がる「円安」が原因で、輸入品中心に起きています。そしてその背景には、「日本が魅力ある製品をつくれなくなっている」という根本的な問題があります。それを解決しない限り、いくら運用で資産を増やしても意味がありません。

米が足りなくて価格が上がっているのに、お金を増やすことだけ考えても仕方がないですよね?米自体をつくらなければ解決しない。それと同じです。かつては世界中が日本の家電や音響機器を買っていましたが、今はiPhoneやデジタルサービスなど、アメリカの製品が中心。日本も大量に買っています。これは、アメリカが資産運用を頑張ったからではなくて、投資という仕組みを使って、若い人たちが新たな製品やサービス生み出そうとチャレンジした結果です。本来、金融とは「お金を融通する」仕組みであり、挑戦を後押しするものです。それなのに、「チャレンジする人」を育てず、「金融商品をどう買うか」だけ教えても、意味ないですよね。根本の問題は、「個人がお金を増やせないこと」ではなくて、「欲しいものをつくれず海外に頼っている」ことなんですから。

次ページ > 「社会のために働く」ということ

文=古賀寛明

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事