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2025.08.12 20:00

「いのちとテクノロジーは響き合う」宮田裕章と日本IBMが大阪・関西万博で伝えたいこと

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催されている大阪・関西万博。慶應義塾大の宮田裕章が手がけたシグネチャーパビリオン「Better Co-Being」は、日本IBMをはじめとするテクノロジーカンパニーの最先端技術とアート体験、そして自然が溶け合い、万博の中心地で異彩を放っている。本パビリオンにこめられた思いとは。Forbes JAPANオフィシャルコラムニストの西村真里子がその問いに迫る。


開幕から4カ月、7月中旬には一般客の累計来場者数が1,000万人を超えた大阪・関西万博。象徴的な大屋根リングの遊歩道から内側を眺めると世界各国の絢爛なパビリオンが広がる。

一方、その中心にあるのは「静けさの森」。青々と茂る森のなかに佇んでいるのが、シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」だ。

Better Co-Beingのパビリオン。周辺には高いパビリオンがないため、空が広く感じられる(写真:2025年日本国際博覧会協会提供)
Better Co-Beingのパビリオン。周辺には高いパビリオンがないため、空が広く感じられる ©Better Co-Being

プロデューサーの宮田はデータサイエンスを専門としながら、これまで社会課題解決に向けた多様なプロジェクトや提言を行ってきた。そんな宮田が抱いた設計意図とは何か。宮田は1970年開催の大阪万博との違いから、説明し始めた。

「1970年万博では、基幹プロデューサーだった丹下健三による理性の象徴としての建築と、そこに穴を開けて命の輝きを表現した岡本太郎による『太陽の塔』が象徴的で、これはふたつのエネルギーの対立の中から未来に向かっていく強烈な体験を作り出していました。しかし2025年の万博では、対立ではなく、共鳴により未来のイメージを立ち上げることを目指しました。Better Co-Beingも『未来をともに感じてもらうもの』として設計しました」

Better Co-Beingをプロデュースした宮田裕章
Better Co-Beingをプロデュースした宮田裕章

Better Co-Beingは、屋根も壁もない、会場唯一の屋外のパビリオンだ。宮田のアイデアをもとに建築を担当したのは、石川県金沢市の21世紀美術館などを手がけ、国内外で数々受賞歴がある日本の建築家ユニット、SANAA(サナア)。

その空間に、塩田千春、宮島達男、 EiM(蜷川実花ら)といった名だたるアーティストとコラボレーションして編まれた3つの場面(シークエンス)が用意されている。来場者は一人ひとりに「echorb(エコーブ)」と名付けられた石ころがモチーフのデバイスが手渡され、15名1組のチームをつくってその場面を回っていく。

未来をともに感じてもらうためにアートを体験する手法を選んだのは、「問いが開かれるから」と宮田はいう。

しかし、アート作品から何かの問いを受け取るという体験は、そもそも鑑賞に慣れていなければ難しい側面もある。そこで、来場者の誰もが問いを受け取れるような体験をデザインするために、大きな役割を果たしているのが、さまざまな形で実装されたテクノロジーだ。

(左) シークエンス1にある塩田千春「言葉の丘」。人と人との共鳴がテーマで、多様な言語で書かれたつながりを巡る言葉が、ネットワークのような赤い糸に繋がれている。(右)シークエンス2にある、宮島達男「Counter Voice Network - Expo 2025」。音声を軸にしたインスタレーションで、9から1までをカウントダウンするさまざまな言語が混ざり合う。(写真:2025年日本国際博覧会協会提供)
(左) シークエンス1にある塩田千春「言葉の丘」。人と人との共鳴がテーマで、多様な言語で書かれたつながりを巡る言葉が、ネットワークのような赤い糸に繋がれている。©Better Co-Being(右)シークエンス2にある、宮島達男「Counter Voice Network - Expo 2025」。音声を軸にしたインスタレーションで、9から1までをカウントダウンするさまざまな言語が混ざり合う。

アートとテクノロジーの融合

たとえば「echorb」には、特殊な振動により脳に錯覚を与える3Dハプティクス技術や、鼓動センサ(村田製作所提供のミリ波センサ、荷重センサ)が用いられている。

これら振動をさまざまに操る技術によって、echorbが固い石ころから水の入った物体のように手触り感が変わったり、引っ張られるような振動から次のシークエンスに移動したりとより感覚的な体験を実現できている。また、来場者それぞれの鼓動をechorbの振動と同期させることで、自分の分身のような親しみをechorbに抱いてもらうといった狙いもあり、来場者のさまざまな気づきを促す仕掛けになっているのだ。

さらに、パビリオン体験の助けとなる専用のWEBアプリは、アートの解説を読めるだけでなく、体験中に「心地よさ」や「特別な感覚」を覚えた瞬間を記録できる機能も搭載されている。これら個別の記録は蓄積され、ほかの来場者にも可視化されることで、体験中に知らない誰かの感動や想いを知れたり、自分とは異なる感性に触れたりすることができるようにもなっている。

(上)「ふしぎな石ころ」がモチーフのechorb。パビリオン体験に寄り添うテクノロジーが手のひらサイズに凝縮されている。(下)Better Co-Being体験の専用アプリケーション。アート鑑賞を助けながら、楽しみ方の新しい発見を促すツールだ。
(上)「ふしぎな石ころ」がモチーフのechorb。パビリオン体験に寄り添うテクノロジーが手のひらサイズに凝縮されている。©Better Co-Being(下)Better Co-Being体験の専用アプリケーション。アート鑑賞を助けながら、楽しみ方の新しい発見を促すツールだ。©OBAYASHI CORPORATION

同じ体験をしているのに、体験自体は個々で違っている。テクノロジーにより個々人の体験や感想の違いを可視化し、来場者に感じてもらいたいことは「違いから新しい価値や可能性を立ち上げる」ことだと宮田は語る。

「体験した時の天気や気温、時間帯によって見え方は変わり、さらにテクノロジーによって一人ずつ違う体験ができるようになりました。こうした違いが開かれることで、新しい価値や可能性が立ち上がってくると思うのです。テクノロジーは個々の違いがあるにもかかわらず、共にあり未来とどう向きあうのかという問いを、アートをつないでくれる手段です」

アートと体験の「触媒になる」。日本IBM協賛の思い

こうしたさまざまなデータを集約し、echorbを通じてリアルタイムにデータ処理しているのが、Better Co-Being内の丘の下にあるというIBMのミッション・クリティカル・サーバー「IBM Power」だ。

業界や業種を問わずにさまざまな企業の基幹インフラや社会基盤を支えているIBM Powerは、サイバーアタックに対するセキュリティも万全。さらには省エネルギー設計と、各パビリオンに割り振られている電力消費量を圧迫しない。猛暑などさまざまな気象条件下でも不具合なく運用できる、安全で堅牢なサーバーなのだという。

協賛にあたって、パビリオンの理念に“共鳴”した理由を、日本IBMテクノロジー事業本部 パートナー事業 兼 テクノロジー営業統括部長 執行役員の榎並友理子は次のように語る。

「いのちのつながりや価値観の共有を体験化することは、IBMの『世界をより良く変えていくカタリスト(触媒)になる』というパーパスとつながっています。テクノロジーを通じてつながりを支える、これはIBMが目指している人と人、人と社会との関係性を深める触媒になるという私たちが目指す姿と一致しており、それが協賛理由になっています」

日本IBMテクノロジー事業本部 パートナー事業 兼 テクノロジー営業統括部長 執行役員の榎並友理子
日本IBMテクノロジー事業本部 パートナー事業 兼 テクノロジー営業統括部長 執行役員の榎並友理子

実はIBMと万博の歴史は古い。1970年の大阪万博では、来場者が触れる大型コンピュータや、当時最先端だった音声応答システムを展示し、テクノロジーと人間社会が結びついた未来のイメージを示してきた。

「IBMが万博に関わる意義は3つあります。1つ目はテクノロジーに関する啓発・可視化です。AIなどのテクノロジーが、未来の社会にどういった役割を果たすかということを体感を通じて見せていくこと。2つ目がテクノロジーの社会実装の実験場。その時代時代の社会課題に対して、テクノロジーがどう寄与できるかを先行して検証・提示する場。3つ目がIBMのパーパスの実現。IBMは単なる技術提供者ではなく、社会を変革するカタリストになりたいという思いを持って万博に参加しています」

社会変革のためのテクノロジーについて、IBMは、AIや量子コンピューターなど最先端のテクノロジーを用いて社会実装を進めている。

「AIを用いた例では、難病情報照会AIアプリを公開しています。難病疾患の方は専門医も少なく、自分の病気を長期間診断されずに苦労されているという課題に対して、AIを使い京都大学大学院医学研究科とRADDAR-J for Society株式会社との共創により、患者さんとそのご家族、および医師と研究者向けに難病情報へのアクセスと難病研究の支援を目指したものです」

「量子コンピューターは量子力学の原理を応用して動作する新しい計算技術です。量子特有の性質を活用することで、並列的かつ膨大な計算処理が今後可能になると、例えば素材探索、医薬品開発、金融リスクの評価など、さまざまな社会の変革をもたらす可能性があると考えています。今年は理化学研究所のスーパーコンピューター『富岳』と、IBMの量子コンピューターを結合させていくという新たな取り組みも進展しています。それぞれの得意領域――『富岳』の膨大な演算処理力と、『量子コンピューター』の高度な組み合わせ最適化能力――を活かして、ハイブリッドに補完し合うことで、実用化に向けて計算精度・速度ともに大幅な向上が期待されています」

こうした最先端の技術は、社会のあり方にインパクトを与えるものだ。宮田はテクノロジーがもたらす変化をこう捉えている。

「農業革命、産業革命、情報革命と続いてきた歴史の先に、いま私たちは『ともにつくり、ともに使う』という発想に立脚した新たな社会モデルへと向かっています。たとえば石炭や石油といった資源は使えばなくなるものであり、奪い合う構造を生みました。しかしデータや太陽光などの再生可能エネルギーといったものは、共有できます。共に使うものを、共に作り出すという場を生み出せる。また、必要な人に必要な資源を必要なタイミングで届けられるのも、技術の力だと思うのです。私はこれを『最大多様の最大幸福』と呼んでいます」

共鳴し、呼応する万博

万博開始から4カ月経ち、宮田は「開始前にはなかった深みが出ている」と語る。

「これまでの万博は“テンプレート”を提示し、皆が同じ体験をなぞる構図でした。でも今回は違います。訪れた人々の力、そして IBM Power をはじめとするテクノロジーのおかげで、個々の体験が開かれ、開始前になかったスピンオフ展開のアイデアも生まれています。多様な未来が開かれていると感じます」

6月下旬に実際にパビリオンを体験した榎並は「IBMの社員として非常に誇りに感じる体験でした」と語り、共創する価値の意義を実感したと話す。

「協賛という形で関わる中で、一企業が単独で価値を提案するのではなく、宮田先生をはじめ、万博の関係者、来場者、建築関係者など、さまざまなプレーヤーと共創しながら価値を生み出しているとも感じました。このプロジェクト全体が、まさに社会におけるカタリストのような存在になっています。いま直面する社会課題は、圧倒的なリーダーや1社だけでは解決できません。人と技術、自分と誰か、社会と未来——それらをどうつなげるかを五感と想像力で感じながら、皆で一緒に考え、一緒に動くことが大切だと感じています」

Better Co-Being パビリオンは、来場者の体験を縁の下で支える IBM Power のシステム基盤とともに、人と人、そして社会と未来を結び付ける場として機能している。いのちとテクノロジーが対立ではなく共鳴によって結び付き、互いの違いを尊重しながら未来を共創する——大阪・関西万博のBetter Co-Beingパビリオンは、その可能性を体現し続けている。

最後に宮田はこう締めくくる。

「大屋根リングと静けさの森が呼応し合い、人と人が共鳴しながらそれぞれ違った発見をする。そうした小さな積み重ねが、未来をともにつくる力になると信じています」

日本IBM
https://www.ibm.com/jp-ja


みやた・ひろあき◎慶応義塾大学 医学部教授。専門はデータサイエンス、科学方法論、Value Co-Creation。データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う。2003 年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座助教を経て、2009 年 4 月東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座 准教授、14 年 4 月同教授(15 年 5 月より非常勤) 、15 年 5 月より慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授。2025日本国際博覧会テーマ事業プロデューサー。

えなみ・ゆりこ◎ 日本IBM テクノロジー事業本部 パートナー事業 兼 テクノロジー営業統括部長 執行役員。慶應義塾大学卒業後、日系SIerでの営業を経て2007年日本IBMに入社。ソフトウェア営業を皮切りに、ライフサイエンス、公共、メディアなど多様な業界の営業部門で経験を積む。営業部長、本部長を経て、2020年に理事、2022年に執行役員に就任。現在はパートナー事業 兼 テクノロジー営業統括部長として、IBMの技術とパートナー・エコシステムを通じたお客様の変革支援に取り組んでいる。

Promoted by 日本IBM | text by 西村真里子| photographs by 富貴塚悠太