長谷川:私が社会的な活動に関心をもつようになったきっかけは、隣に引っ越してきた女の子との出会いでした。彼女はサッカーを続けたがっていたのに、車で2時間もかかる場所にしかチームが見つからなかったのです。子どもがやりたいスポーツを諦めなければならないという現実を、スポーツに携わる我々が見過ごしていいのだろうか。そう感じていたときに、女性のスポーツ機会の拡大に取り組む機会を得て、自分の関心が社会課題とつながった手応えを感じました。ソーシャル・イントラプレナーとは、従来のビジネスの延長ではたどり着けない価値を生み出す存在です。企業が情熱をもって社会課題に取り組む人を支援する文化が広がれば、経済はその延長線上に自然と力強さを取り戻していくのではないでしょうか。
吉備:私はPYNTを始める前から、「歩くマッチングアプリ」と呼ばれるほど「社会をより良くしたい」という思いのある人と人をつなげる活動に積極的に取り組んできました。しかし、PYNTの立ち上げによって、個人的な動きが組織的な取り組みへと進化し、社会に与えるインパクトが飛躍的に拡大したことを実感しています。自らの視野が広がることで新たな接点が生まれ、それがまた会社や社会への還元につながる。そんな好循環が機能しているのは、PYNTの意義が経営者に理解され、社内での位置づけが明確になっているからです。
「一人ひとりが高いモチベーションをもって社会課題に取り組むことこそが、日本経済の活性化につながる」と信じる経営層が増えれば、ソーシャル・イントラプレナーの可能性は、さらに大きく広がっていくように思います。
本多:企業という環境のなかでソーシャルビジネスに取り組むことには、非常に大きな意義があります。安定した基盤の上で、社会課題という本質的なテーマに腰を据えて向き合えるからです。これまでは本気で社会課題に取り組みたいと思った人の多くが「起業しか道がない」と考え、挑戦を諦めてきたかもしれませんが、それは本当にもったいないことだと思います。 今所属している会社や、思いを理解してくれる組織のなかでこそ、大きな社会的インパクトを生み出すことができます。私はソーシャル・イントラプレナーという働き方を今後さらに広めていきたいですし、それを支える土壌として、企業内からの社会課題への挑戦に理解を示す経営層が増えていくことを心から望んでいます。
KEYWORD 3:なぜ今、ソーシャル・イントラプレナーシップなのか|グローバルな環境問題や社会課題が深刻化する中、企業は持続可能な発展のために、「社会課題を価値に変え、未来を創るサステナブル人材」が求められている。ソーシャル・イントラプレナーシップを通じて、社会的責任と経済的成果を両立させ、新たな企業価値の創出を実現する。(ソーシャル・イントラプレナー・スクールの定義)


