国内

2025.08.11 13:00

大企業のリソースで社会貢献、ソーシャル・イントラプレナーたちの挑戦

本多達也(富士通) × 香田和良(商船三井) × 吉備友理恵(日建設計) × 長谷川乃亜(モルテン)

長谷川乃亜(以下、長谷川私はモルテンで女性のスポーツ継続支援に関する活動を推進しています。きっかけは東京五輪における女子バスケットボールの銀メダル獲得でした。競技への注目度が高まり、バスケットボール女子日本リーグから「社会的な活動を始めたい」と相談を受けた際に、「18歳を超えると女性の80%がスポーツをやめてしまう」という現実を知ったのです。現在、活動はグローバルに広がり、 FIBA(国際バスケットボール連盟)とともに、大会開催地で地元チームとロールモデルが交流できる機会を提供するなど、スポーツに携わる女性をエンパワーメントする活動を進めています。さらに、FIBAが重点戦略として打ち出している、女性のバスケットボール戦略で目指すゴールに対して、ビジネスプランを立案し、それをサポートする「シャークタンク」形式のイベントも構想中です。こうした取り組みはモルテンスポーツ用品事業部の方針である「誰でもスポーツに関わり続けられる環境をつくる」とも一致しており、周囲の支援を得ながら継続的に挑戦できる環境が築かれつつあります。

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吉備友理恵(以下、吉備私は日建設計において、多様な専門性や課題意識をもつ人をつなぐ共創プラットフォーム「PYNT(ピント)」を運営しています。当社は受託中心のビジネスモデルでしたが、PYNTでは、社員が抱く「こんな社会課題を解決したい」という思いや取り組みを可視化し、社外を含め組織やセクターを超えてつなぐことで、社会課題を起点とした共創プロジェクトや共同事業を生み出しています。PYNT発のプロジェクト事例のひとつ「コミュニティドライブプロジェクト」では、「人口減少社会のなかで地域の移動やインフラをどう再構築するか?」に取り組んでいます。PYNTの成長を支えているのは、当社が中期経営計画で21年に掲げた「社会環境デザインプラットフォームへの進化」というビジョンです。建築や都市のハードだけでなく、人の価値観からサービス・仕組みまで一体的にまちを考える会社の姿勢と、それを駆動する場が揃ったことで、ソーシャルな活動が会社の未来と重なる土壌が社内に生まれました。

社内起業家×社会起業家

長谷川:起業と比べ、安定した環境で取り組めることはソーシャル・イントラプレナーの利点です。もちろん収益性を求められるため、継続は簡単な道のりではありません。それでも、企業価値の向上に貢献している側面はあると考えています。通常モルテンはFIBAに対して公式球採択に伴う契約料を支払うライツホルダーの立場にありますが、本プロジェクトではビジネス上の権利関係にとどまらず、共通の価値観に基づいて連携しているため、コストも双方で負担し対等な関係を築いています。また、社会活動に取り組んでいることが当社の独自性として認められ、グローバルパートナーとして強固なパートナーシップを築くことができている事実もあります。

香田:企業で社会的な活動に取り組むことの恩恵は計り知れません。もしこの活動をひとりで始めていたら、事業成長に相当な時間がかかっていたはずですし、世界的に存在感のあるパートナーと連携する機会もなかなか得られなかったでしょう。また、長期的なコミットが求められるテーマだからこそ、事業の継続性が重要になりますが、私が育休を取得した際には後任のメンバーがアサインされるなど、持続可能な環境が与えられたことはとてもありがたかったです。社内起業である以上は会社の方針に事業が左右される可能性は常にあるため、昨今のグローバルな環境対策の後退に対して当社はどう応じていくのか、常に緊張感をもってみています。

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香田和良◎商船三井 カーボンソリューション事業開発ユニット統括・カーボンリサイクル事業チーム チームマネージャー。10年間エネルギーの海上輸送に従事した後、気候変動に対して行動を起こさねばとの思いから、社員提案制度を通じてインドネシアでのマングローブ植林をはじめとするカーボンリムーバル事業を社内で立ち上げる。東京大学卒業(国際関係論専攻)、大学院大学至善館MBA修了。
香田和良◎商船三井 カーボンソリューション事業開発ユニット統括・カーボンリサイクル事業チーム チームマネージャー。10年間エネルギーの海上輸送に従事した後、気候変動に対して行動を起こさねばとの思いから、社員提案制度を通じてインドネシアでのマングローブ植林をはじめとするカーボンリムーバル事業を社内で立ち上げる。東京大学卒業(国際関係論専攻)、大学院大学至善館MBA修了。
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文=一本麻衣 写真=若原瑞昌

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