北米

2025.08.05 13:30

ポスト・トランプ 三つの変革

Joshua Sukoff / Shutterstock.com

第三は、現在の自由主義の「劣化」である。

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本来、自由主義が健全に機能するためには、他者や弱者に配慮する「共感や博愛」「倫理や道徳」「公共意識」「社会貢献」などの価値観が不可欠であるが、現在の世界は、個人から国家のレベルに至るまで「自己中心的」な価値観が蔓延している。

「アメリカ・ファースト」というスローガンは、一見、心地よい響きを持ち、それがトランプのような人物を大統領の座に押し上げたのであるが、その根底にあるのは「世界の他の国のことなどどうでも良い」「未来の世代のことより自分の世代だ」という思想であり、それが、途上国支援の廃止や温暖化対策の軽視などの愚策を通じて、世界全体の発展と未来世代の福祉を毀損し、米国の国益をも毀損してしまうことは、火を見るよりも明らかであろう。

このように、これまでの世界が、資本主義の歪み、民主主義の脆弱さ、自由主義の劣化という「三つの病」を深刻に受け止めることなく放置してきたことが、トランプ政権という「最悪の病状」を生み出したことを、我々は、理解すべきであろう。

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今年発足したトランプ政権は、いかなる批判・非難や反対運動があっても、いずれ四年は続く。その四年間に、どれほどの愚策が実行され、世界の政治、経済、社会に、どれほどの混乱と被害をもたらすか、筆者にも想像がつかない。それは、いずれ、後世の歴史家によって「世界最強の国において、最悪の政治体制が成立したとき、何が起こるか」の事例として、徹底的な検証が行われるであろう。

しかし、真に大切なことは、そうした検証ではない。この四年間の痛苦で悲惨な経験を通じて、米国と世界全体が深く学び、トランプ政権という最悪の病状を生み出した、資本主義、民主主義、自由主義の深刻な病に対して、どこまで根本的な治療(三つの変革)に取り組むことができるかであろう。

ポスト・トランプの時代に、その三つの変革ができるか否か。それができなければ、世界は、資本主義の暴走、民主主義の崩壊、自由主義の堕落という病、すなわち「死に至る病」に向かっていく。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国8800名の経営者が集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など100冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp

文=田坂広志

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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