北米

2025.08.04 11:30

平均寿命が伸び悩む米国、先進国では異例 銃犯罪など特有の事情が影響か

米国のロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官。2025年4月16日撮影(Alex Wong/Getty Images)

米国のロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官。2025年4月16日撮影(Alex Wong/Getty Images)

2023年の米国の死者数は、2010年以前の死亡率が続いていたと仮定した場合に予想される死者数を約52万5000人上回った。これにはさまざまな要因が考えられる。同国では心血管疾患ががんと並んで死亡原因のトップを占め続けているが、医療ミスや薬物の過剰摂取、銃犯罪や乳児死亡率の高さなども死者数増加の一因となっている。

米国の平均寿命は過去15年間にわたり伸び悩んできた。米疾病対策センター(CDC)が発表した死亡率に関する報告書によると、2023年の米国人の出生時の平均余命は、2022年の77.5歳から78.4歳に伸びた。この伸びは新型コロナウイルスによる2020~21年の大幅な短縮から回復していることを示しているが、平均寿命自体は依然として2010年の水準を下回っている。また、暫定的なデータでは、回復の勢いが衰えつつあることから、2024年の平均寿命の伸びは前年と比較して大幅に小さくなる可能性が示されている。

英医学誌ランセットに掲載された米ワシントン大学の研究によると、米国の平均寿命は2023年の78.4歳から2050年には80.4歳に届くと予測されているが、この伸び幅は他の先進国と比べるとはるかに小さい。この控えめな伸びにより、世界の平均寿命ランキングでは、米国が49位から66位に転落するとみられている。

平均寿命とは、ある年に生まれた新生児が、その時点の死亡率に基づいて生存すると予想される平均年数を推定したものだ。これは、国民の健康状態を測る基本的な指標と考えられている。

米ブルームバーグ通信が発表した報告書は、米国と他の先進国の平均寿命の差が今後も拡大し続ける可能性が高い理由として、米国では心血管疾患や肥満、糖尿病の発症率が比較的高いことに加え、薬物の過剰摂取や銃犯罪、交通事故による死亡のほか、乳児や妊産婦の死亡率が高いことなどを挙げている。これらの要因は、例えば米国と英国の平均寿命の差が2.7年あることにも表れている。日本、韓国、ポルトガル、英国、イタリアといった他の先進国ではすでに平均寿命が80歳を超えている。米国と他の先進国との格差は1980年以降、拡大の一途をたどっている。

米医師会紀要に掲載された、2007~23年までの米国の子どもの健康指標170項目を分析した調査では、同国の若年層の厳しい現状が浮かび上がった。米国の乳児死亡率は他の先進国の1.8倍に上り、子どもの死因の第1位は銃器による事件や事故で、他国の同年代の若者と比較して肥満や不安症、うつ病の割合が大きい。

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翻訳・編集=安藤清香

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