北米

2025.08.04 11:30

平均寿命が伸び悩む米国、先進国では異例 銃犯罪など特有の事情が影響か

米国のロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官。2025年4月16日撮影(Alex Wong/Getty Images)

米国では多額の費用が医療に投じられているにもかかわらず、平均寿命が比較的短いことが政策立案者の懸念の的となっている。実際、同国の医療支出は他のどの国と比較しても、絶対額でも国民1人当たりでもはるかに多い

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この「平均寿命の危機」について、米国のロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官は、慢性疾患が根本的な原因だとみている。具体的には、肥満や糖尿病、がんのほか、自己免疫疾患や神経発達障害、アルツハイマー病、喘息、依存症の増加率を挙げている。ケネディ長官は、慢性疾患の増加は食生活の乱れと環境毒素が原因だとしている。

そのため、同長官は慢性疾患の予防に力を入れ、特に栄養学と食品から特定の成分や添加物を取り除くことに重点を置いている。同長官が提唱する「米国を再び健康に(MAHA)」運動では、食生活が常に重要な要素とされてきた。MAHAは、人工着色料、農薬、添加物に狙いを定め、米国人の食習慣を超加工食品から脱却させようと努めている。ケネディ長官は、超加工食品と糖尿病の関連性について国民に啓発する運動を計画している。だが、同長官の栄養改善計画は公衆衛生界からは一定の支持を得ているものの、食品業界の既得権益やドナルド・トランプ政権の他の政策と衝突する可能性がある。

ケネディ長官は、欧州では食品規制が慢性疾患の発症率の低減に役立っていると強調している。他方で、医療の受けやすさや貧困率の低さ、大気汚染の少なさといった、欧州の他の政策を見落としているのではないかと指摘する声もある。そのほか、同長官は銃犯罪や交通事故、医療ミスや乳児と妊産婦の死亡率など、平均寿命の伸びを改善できる可能性のある特定の要因を見逃している可能性もある。

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同様に重要なのは、自殺やアルコール依存症、違法薬物の使用といった「絶望の病」に取り組むための行動指針だ。ケネディ長官は依存症を予防する決意を表明しているが、議会では保健予算の大幅な削減が可決されたことから、薬物乱用障害の抑制に向けた努力が無駄になる恐れがある。

米国の公衆衛生は極めて大きな課題に直面しているが、そのうちの1つが連邦および州レベルの予算縮小だ。平均寿命の伸び悩みに対処するためには、公衆衛生に影響を及ぼす幅広い取り組みに政府が持続的に資金を提供する必要があることは、政治的な隔たりを越えて専門家の意見が一致している。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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