The Informationなど複数の情報源によれば、テスラのヒト型ロボット(ヒューマノイド)計画「Optimus」(オプティマス)は暗礁に乗り上げている可能性がある。
オプティマスの初期設計情報はすでにネット上に出回っており、量産モデルがどのような汎用二足歩行ロボットになるかもおおよそ判明している。しかし同社が掲げた目標を達成できていない兆候が見受けられる。
Optimusは数百台止まり、計画に大きな遅れ
テスラは当初、2025年に5000台、2026年に5万台を生産すると公表していた。ところが現時点で製造された機体はせいぜい数百台と報じられており、中国のサプライヤー筋の情報から、生産が完全に停止している可能性も浮上している。
台湾の市場調査会社TrendForceが発表したプレスリリースは次のように述べている。
「中国のサプライチェーンから寄せられた最新の報告によれば、テスラはヒト型ロボット『オプティマス』の生産を中断している可能性がある。TrendForceによれば、テスラが現在直面している主要課題は2つある。第1にバッテリー駆動時間の短さ、第2にハードウェアとソフトウェアの統合の難しさだ。AIによるモーションプランニングやエネルギー最適化の進歩はバッテリー性能の改善に寄与すると期待されるものの、関節モーターや伝達系といった中核ハードウェアの効率性という、根本的なボトルネックは依然として残っている」。
さらに、ロボットの手の構造や各種行動設計にも不具合が報告されており、アナリストは「開発サイクルをより長く取る必要があるかもしれない」と指摘する。
EV事業の不振などがロボット開発に影を落とす
まず、テスラは自動運転プログラムをはじめ多くの案件を同時進行させている。また、同社は車両販売でも伸び悩んでおり、ヒト型ロボット分野に投入できるリソースが圧迫されているとみられる。
TechCrunchの記者カーステン・コロセックは先週、次のように報じた。「EV販売の減少、平均販売価格の下落、規制クレジット(排出ガス規制に基づく環境クレジット)収入の減少、そして太陽光発電・エネルギー貯蔵事業の売上縮小が、2025年第2四半期のテスラの利益を圧迫した。スーパーチャージャー網などを含むサービス事業の収益が17%伸びたものの、ギャップを埋めるには至らなかった」。
専門家は、Boston Dynamicsやその他の海外メーカーの方がテスラよりもヒト型ロボットの設計・開発で先行していると指摘する。筆者が今夏に取材した北京マラソンを走るロボット群も、その見解を裏づけるものだ。
壮大な「数値目標」を掲げてきた歴史
イーロン・マスク率いるプロジェクトが、提示した目標値を達成できなかった例は、これまでも存在する。テネシー州の巨大データセンター「Colossus」(コロッサス)は莫大な電力と冷却水を消費する施設だが、筆者が調べたところ、そこで稼働しているGPUの実際の数は約20万基であり、マスクがその数を100万基に増やしたいと語っていたことを思い出した。
もちろん、マスクがその目標に言及した記録は残っており、これは1年後の現在の実稼働数の5倍の数字だ。
では、オプティマスの生産台数計画にはどれほど誇張が含まれており、実際に同社はどの程度遅れを取っているのか。答えは時間が示すだろう。
もし生産が停止しているのであれば、課題が解決されるまで出荷台数はゼロにとどまる。
ロボットは、いつ街中に現れるのか?
技術的には実用化が目前に迫っているものの、街頭や家庭でロボットを目にするまでにはまだ至っていない。だがオプティマスが遅延したとしても、今後数年以内にヒト型ロボットが私たちの生活に姿を現す可能性は高い。それは仕事、家庭、社会、地域コミュニティにどのような影響を及ぼすのだろうか。
疑問は多い。筆者は今後も、会議や講演で得た洞察、テック業界の重要ニュース、そして私たちがまったく新しい世界を歩む上で助けとなる隠れたアイデアを伝えていくつもりだ。



