経営・戦略

2025.08.09 15:45

MIKI HOUSEの海外展開に学ぶ、「語られる」ブランドのつくりかた

MIKI HOUSE AMERICAの竹田欣克社長

MIKI HOUSE AMERICAの竹田欣克社長

2024年10月、ニューヨークのプラザホテル内に、日本の子供服ブランドが「MIKI HOUSE」が出店した。また同時期に、クイーンズの高級ショッピングモール「タングラム」で展開していた長期ポップアップストアを正式な常設店舗へと刷新し、2025年3月にリニューアルオープンした。

前回記事では、MIKI HOUSEのプラザホテル出店による「場所のブランド力」の活用、データ基準の「勝敗ライン」による出店戦略、そして「教育・養育的価値」による商品の非日用品化について考察してきた。本稿では、デジタル時代における現場実践戦略と、日本企業への示唆を探る。

デジタル時代におけるオムニチャネル戦略の実践 

興味深いことに、MIKI HOUSEのニューヨーク展開は、デジタル全盛時代における物理店舗の新たな役割を提示している。つまり、物理店舗は「販売拠点」ではなく「ブランド体験の入口」として機能しているのだ。 MIKI HOUSE Americas, Inc.社長であり、先日 三起商行株式会社の取締役に就任した竹田欣克氏は「お客様の利便性を追求する(顧客中心主義)発想で、システム面でもソフト面でも、オムニチャネル戦略の拡充を企図しています」と語る。

ニューヨークのプラザホテル内に出店した「MIKI HOUSE」
ニューヨークのプラザホテル内に出店した「MIKI HOUSE」

実際に、「店舗に来ていただいたお客様に、ご購買の有無を問わず、Brochureをお渡しするようにしていて、そこからご関心を持って下さった方々が、後日店舗を再訪問されるか、ECでお買い物をされていることがままあります」という具体的な成果を確認している。

同社にとって「クオリティが極めて高い商品そのものが一番の『マーケティングツール』」であり、「まずは手に触れてもらうことが大切」という考えがある。店舗では様々なIn-Store Eventを行い、「仮にお買い上げいただかなくても、足の計測や試着を常に無料で行っております」という。

プラザホテルという「語られる場所」での体験が、顧客の記憶に深く刻まれ、長期的な関係構築の基盤となっていくことは間違いない。これは、小売業界で「ショールーミング」として知られる事象だ。顧客はリアル店舗で商品を体験し、その後、購買はより便利な方法をとり、オンラインで行われることが多々ある。

竹田社長は、「オムニチャネル戦略に則り、Real to Online(あるいはOnline to Real)の流れは、今後も強化したいところです」と語る。 パンデミック時に完全オンラインに切り替えたMIKI HOUSE Americas, Inc.は、この消費者行動を熟知しており、それも前提とした戦略設計により、単発の売上ではなく、継続的な顧客関係の構築を実現していると言える。

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文=日野江都子

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