経営・戦略

2025.08.08 15:45

プラザホテルが認めた日本ブランド。MIKI HOUSEの「子育て哲学」

NYプラザホテルに出店した「MIKI HOUSE」

「勝敗ライン」で測る店舗価値 

高級ショッピングモール「タングラム」での展開プロセスは、現代の企業構築における意思決定の重要点を如実に示している。

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MIKI HOUSE Americas, Inc.社長であり、先日 三起商行株式会社の取締役に就任した竹田欣克氏は出店戦略について、「事前に決めた『勝敗ライン』を越える売上を取れるか、あるいはそうした数字が期間内に達成できなくとも、近い将来勝敗ラインを乗り越えられるであろう十分なポテンシャルがあると判断される場合のみ、常設化へと移行している」と明かす。

クイーンズの高級ショッピングモール「タングラム」内のMIKI HOUSE
クイーンズの高級ショッピングモール「タングラム」内のMIKI HOUSE

2023年12月に開始されたポップアップストアは当初3カ月限定の予定だったが、設定された数値目標をクリアし、顧客の反響を受けて延長を重ね、最終的に常設店舗となった。このプロセスをあえて顧客に見せることも、MIKI HOUSEが「継続的に選ばれる存在」という信頼感の確立にも繋がっている。

同社は、自社ECの購買データをもとに段階的な店舗展開方針を計画し、まずはPOPUPで市場の反応を検証する。そのうえでで常設化を判断するのだ。初期投資を抑えつつ、データに基づいた客観的判断で規模を決定していく。こうした方法は、特に日本から海外進出する企業にとっては、初期コストやその他のリスクを抑えながらも顧客との関係構築において大きな効果を生み出す可能性を秘めている。

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「教育・養育的価値」による非日用品化戦略 

MIKI HOUSEの成功要因として見逃せないのが、日本的な「子育て哲学」のアメリカ市場への絶妙な翻訳だ。

同社のブランドアイデンティティは、「Blending Japanese craftsmanship with forward-thinking design, MIKI HOUSE brings premium children's fashion and lifestyle essentials to the families around the world.」という宣伝文句に集約されている。

竹田社長は、「接客シーンにおいては、見た目の可愛さやカラフルな色使いにご興味を持っていただいたお客様には、お子様の健やかな成長と着心地・履き心地のよさをとことん追求した、当社ならではモノづくりについて、必ずご説明するようにしています」と語る。

「価格帯的には欧州のスーパーブランドと同じレベルですが、子供専門のブランドゆえ、スーパーブランドのようにかっこいい"Mini Me"的なデザインを追求するのではなく、お子様の健やかなご成長と快適さを軸足においたモノづくりをしております」と竹田社長が説明するように、アメリカ市場でもブランドアイデンティティを軸に訴求している。その結果として、「当社のシューズを履いたお子様たちが、他ブランドのシューズを履かなくなるという現象が多々起きています」という具体的な成果も。

単に「子供服」を販売するだけでなく、「教育的価値」や「文化的背景」を取り込んだブランディングによって、子供服が日用品から意味のある特別な存在へと昇華された。つまり「教育投資マインド」に訴求することで、衣料品でありながら「教育的価値」を持つ特別な品として認知されることに成功している。加えて、子供服はギフトとして選ばれることが多く、その「贈る理由」は文化を超えて共感を呼ぶ。これは、単なる機能性ではなく、「思想」や「価値観」を現地の文脈に沿って翻訳・伝達することの重要性を物語っている。

しかし、同社の真の革新は、こうした戦略的基盤の上に構築された「実践」にこそある。デジタル全盛の時代において、なぜ物理店舗への投資を続けるのか。「日本らしさ」を「押しつけ」ではなく「融合」として伝える具体的手法とは何か。そして、データと感情の両方に訴える顧客体験は、どのようにして継続的な顧客関係の構築に結実するのか。

次回は、竹田社長の言葉を通じて明らかになった同社の実践戦略を詳述し、日本企業がグローバル市場で勝ち抜くために必要な「新たな能力」について考察する。

文=日野江都子

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