アジア

2025.08.03 09:00

「債券自警団」が中国にも徘徊中 財政赤字が拡大傾向、金利に上昇圧力

and4me/Shutterstock

and4me/Shutterstock

中国人民銀行(中央銀行)は例年よりも忙しい夏場を迎えている。それはドナルド・トランプ米大統領による関税だけが理由ではない。

人民銀の潘功勝総裁の監督下にあるチームは7月25日、売却条件付き債券購入(リバースレポ)を通じて、中国本土の金融市場に6018億元(約12兆4800億円)の短期流動性を流し込んだ。これは中国の債券市場に深刻な問題が持ち上がりつつあるという符丁だ。

前日には中国財政省が実施した30年物国債の入札で、平均落札利回りが今年3月以来の高さを付けていた。投資家が損失を警戒している兆候である。朗報は、人民銀が市場に注入した資金のおかげで、状況が今のところは落ちついていることだ。

とはいえ、中国の金利への上昇圧力は今後も消えそうにない。米中間で続く貿易対立が世界中の市場に影を落としている状況にあっては。世界1位と2位の経済大国は7月末、貿易交渉の決着を再び先送りにした。

これは良いニュースとは言いがたい。たしかに、全面的な関税戦争は一時的に抑えられてはいる。しかし、世界の市場は少なくともさらに90日間、この先に備えてどうヘッジすればよいのか判断が難しい状態に置かれる。また、もしトランプのホワイトハウスがこの間に中国との交渉で「合意」を発表したとしても、はたしてそれが重要な転機になるのか、それとも、2025年の経済見通しのカギを握るであろう本格的な2国間協定に向けた下準備にすぎないのかも見極めにくい。

中国の国債利回りに上昇圧力がかかっているのは実のところ、中国経済への楽観的な見方も一因だ。アジア最大の経済大国は米国の関税攻撃を受けながら、驚くべき粘り強さを見せている。トランプによる中国に対する追加関税率は145%から30%に引き下げられたものの、それでも相当な高関税だ。にもかかわらず、中国経済は2025年4〜6月期に前年同期比5.2%の成長を達成した。

また、過剰な工業生産能力の削減に向けた中国政府の取り組みが、中国経済への信頼感を多少高めている兆しもある。この取り組みの効果で、今後数カ月にデフレが深刻化するリスクもやや後退している。

次ページ > 現状の財政赤字水準は管理可能だろうが、拡大傾向には留意すべき

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事