ゼナ・カードマン氏もスターライナーによってミッションが変更されたひとりだ。当初、彼女はクルー9(2024年9月打ち上げ)の船長にアサインされていた。しかし、スターライナーを失ったバリーとスニの帰還シートを確保するため、クルー9は乗員2名で打ち上げられることになった。その結果、カードマン氏の搭乗機はクルー11へとスライドされた。
クルードラゴンの構造を熟知する彼女は、今回が初めてのミッションでありながらドラゴンの船長を務めている。ノースカロライナ大学で生物学の理学士号と海洋科学の理学修士号を取得したカードマン氏は、深海の熱水噴出孔や地中の生命について研究し、南極探検隊への参加経歴を持つ。
米露の座席交換協定
ロスコスモス所属のオレグ・プラトノフ氏は油井氏と同様、ミッションスペシャリストとしてドラゴン宇宙船に搭乗し、その運用を支援する。彼の前歴も空軍パイロットだ。
ISSは機首側の米国区画と、後部のロシア区間に大別され、それぞれのモジュールはオペレーションが異なる。そのため米露どちらかの宇宙船に不具合が生じた場合、一方の区画を管理運用することが困難になる。この状況を回避するため、米露間ではISSへの人員輸送において「座席交換協定」を締結し、それぞれのクルーを互いの宇宙船に搭乗させることで、両国のクルーが常時ISSに滞在できるようシフトを組んでいる。プラトノフ氏はこの協定のもと、クルー11のメンバーに選出された人物だ。
油井氏を含むクルー11のメンバーは約6ヵ月後に帰還する予定だが、ロシア側クルーの滞在ローテーションが6ヵ月から8ヵ月に変更される過渡期のため、クルー11のメンバーの帰還も8ヵ月に延長される可能性がある。現在NASAでは2026年度予算を巡ってトランプ政権と議会が対立状態にあるが、ロシアにおいても滞在期間を延長することで打ち上げ回数を減らし、ISSに関連する予算を削減しようとしている。


