欧州

2025.08.04 09:00

ロシアは「5年以内」にNATOを攻撃、第三次世界大戦を見据え軍備増強する欧州

北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長。2025年6月25日撮影(Omar Havana/Getty Images)

北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長。2025年6月25日撮影(Omar Havana/Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナを支援する国に対して核ミサイルの使用をちらつかせる一方で、西側諸国との直接的な武力衝突は第三次世界大戦に発展しかねないとも警告している。

一方、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は、急速に再軍備を進めているロシアとの全面戦争を回避するためにこそ、ジェット戦闘機やミサイル、武装ドローン(無人機)の迅速な増強が必要だとして加盟国に働きかけている。

ロシアの戦時武装拡大について研究している学者らは、プーチン大統領はウクライナの同盟国に対抗するための新たな兵器を開発しながら、それらの国々に恐怖感を与えることを目的としていると分析。NATOの軍備増強に向けた動きは、ロシアの支配から逃れた国々を再征服し、ソビエト連邦を再建するというプーチン大統領の基本計画を断念させる可能性があるとみている。

英ロンドンの王立国際問題研究所で演説したルッテ事務総長は、「ロシアのせいで欧州に戦争が戻ってきた」と警告し、プーチン大統領による領土拡張主義によって高まる危険性について概説した。その中で同事務総長は、ロシアが北朝鮮やイランなどの国々と手を組んで軍事力を強化していると指摘し、次のように続けた。「プーチン大統領の軍事機構は減速するどころか加速している。ロシアは軍を再編しつつあり、われわれが考えていたよりも速いペースで兵器を製造している。弾薬に関して言えば、ロシアはNATO全体が1年間で製造する量をわずか3カ月で製造している」

ロシアの首都モスクワで急成長している軍需工場は今年、核搭載可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデル」200発と戦車1500台を製造する予定だ。「ロシアは5年以内にNATOに対して軍事力を行使しようと準備している。5年以内にだ!」 ルッテ事務総長は語気を強めた。

ナチスドイツの軍備増強に追いつくため、英国のウィンストン・チャーチル元首相が長らく遅れていた兵器製造の拡大に着手するよう英下院に呼びかけた演説を引用し、ルッテ事務総長は、欧州が防衛力を強化するのに一刻の遅れも許されないと訴えた。「防空とミサイル防衛を4倍に強化する必要がある。われわれはロシアがウクライナの上空からテロを仕掛ける様子を目の当たりにしてきた。今こそ、われわれは領空を守る盾を強化しなければならない」。同事務総長は、NATO加盟国は空軍を近代化するにしても、ミサイル迎撃システムや戦車、ロケット弾を増やし、海軍の増強も必要になると指摘。これに向けた第一歩として、NATO加盟国は米国からF35戦闘機700機を取得する予定だと述べた。

ルッテ事務総長は「ウクライナの戦場では、わずか400ドル(約6万円)のドローンが200万ドル(約3億円)もするロシアの戦車を破壊している」として、NATO加盟国は新世代のドローンやミサイルシステムの備蓄を開始し、宇宙技術やサイバー戦争に関する専門知識への投資を強化すると宣言した。「平和を守るためには戦争に備えなければならないことを、われわれは歴史から学んできた」

同事務総長は、各加盟国が国内総生産(GDP)の5%を国防費に充てることでNATO全体が強化されれば、ロシアがNATO諸国を攻撃しようとはしなくなり、同機構の集団防衛の盾が将来にわたって10億人の市民を守ることになるだろうと結んだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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