韓国の李在明大統領が25日、ワシントンでトランプ米大統領と初めての首脳会談を行った。今月の米国による相互関税発動の直前、韓国は相互関税率を25%から15%に引き下げることに成功。李氏は首脳会談でトランプ氏を「ピースメーカー」と持ち上げ、米朝首脳会談の開催を勧めるなど、トランプ氏の歓心を買うことに成功した。ただ、「iron clad(鉄桶)」を自称する米韓同盟にとっての試練はここから始まる。米韓両政府は首脳会談後に詳しい説明を避けたが、在韓米軍の削減や役割変更、現在は米軍が持つ朝鮮半島有事の際の作戦統制権(指揮権)の韓国軍への移管、核の傘を含む拡大抑止のあり方など、韓国の安全保障を危機に陥れるかもしれない難題が山積しているからだ。
米国のヘグセス国防長官と韓国の安圭伯国防相は7月31日、初めての電話会談を行った。ここで、韓国の軍事専門家を驚かせたのが、双方が「米韓同盟の現代化」を巡る協議を始めることで合意した点だった。「米韓同盟の現代化」はトランプ米政権が好んで使っている表現で、そこには在韓米軍の役割の変更と削減・移転、韓国による国防費の負担増などが含まれているとされる。韓国側は従来、この表現を使うことに慎重だったが、トランプ政権に押し切られたようだ。
トランプ政権では、コルビー国防次官が中心になり、8月末までにまとめる「国家防衛戦略(NDS)」に、米軍の資産を対中国抑止に集中させる戦略を盛り込むべく調整している。現在、約2万8500人の在韓米軍も、1個歩兵師団やその支援部隊を中心に5千人から2万人規模での削減・移転が進む可能性がある。台湾有事の際、韓国よりも米・グアムにいた方が、中国の弾道ミサイルの脅威を軽減できるし、米韓の政治的な調整を省略して、より柔軟・迅速に展開することが可能になるからだ。予備役の韓国陸軍元将校は「米国が台湾有事に集中すれば、在韓米軍も北朝鮮に対する抑止を最優先できなくなるかもしれない」と懸念する。韓国軍は情報・監視体制やミサイル防衛で主導権を握ることができるほど能力を高める必要がある。
しかし、そうなると、別の悩みが生まれる。「米軍頼み」が効かなくなるため、「韓国軍主導で」という考え方は論理的だが、そうなると、戦時作戦統制権の韓国軍への移管を急がざるを得なくなるからだ。現在は米軍が有事の際、韓国軍に対する指揮権を持っている。米軍の方が韓国軍より圧倒的に情報収集能力があるし、韓国外からの支援軍の受け入れ、兵站などを総合的に調整する能力に秀でているからだ。韓国もこの状況を理解し、韓国軍による指揮能力、ミサイル防衛能力などが一定水準に達し、周辺の安全保障環境も落ち着いていることを移管の条件としてきた。李在明政権は13日、国政運営5カ年計画を発表し、大統領任期(5年)内の戦時作戦統制権の移管を目指す方針を明らかにした。



