海外

2025.08.04 12:00

生成AIの「予期せぬ高額請求」も防止、開発者向けエージェント「Cline」が40億円調達

Shutterstock.com

1年足らずで累計270万件のインストールを記録、評価額163億円を突破

Clineは10月のローンチ以来、累計270万件のインストールを記録した。そして7月31日には、Emergenceが主導し、Pace Capitalと1984 Venturesが参加したシリーズAラウンドで、2700万ドル(約40億円)を調達したと発表した。評価額は1億1000万ドル(約163億円)に達した。

advertisement

創業者のリズワンは、この新たな資金を用いて、すでに同社のツールを利用中のサムスンやドイツのソフトウェア企業SAPといったエンタープライズ向けの有料機能を追加することで、製品の商用化を進める計画だ。

Clineの競合には、評価額が100億ドル(約1.5兆円)を超え、3億ドル(約444億円)以上の資金調達を交渉中とフォーブスが報じたCognition(コグニション)、サブスクリプションによる年間換算収益が5億ドル(約740億円)以上に達したと主張するCursorなどが挙げられる。

最大の差別化要因はビジネスモデル

リズワンは、競争の激しいAIコーディング分野における自社の最大の差別化要因が、独自のビジネスモデルにあると語る。彼によれば、Cursorのような企業は、本来の利用コストを大幅に肩代わりして月額20ドル(約2960円)という非常に割安なサブスクリプション料金を設定し、より安価なAIモデルにクエリを振り分けることで高コストを抑え、収益を上げている。一方、Clineは「そのゲームにはまったく参加しない」と彼は述べた。「私たちはAIの利用料からのマージンは一切取らない。純粋に推論(inference)の処理を案内しているだけだ」と語った。

advertisement

この戦略は、今回の調達ラウンドを主導したEmergenceのパートナーのヤズ・エル=ババを説得する要因となった。「Clineは推論から利益を得ないため、プロダクトのクオリティを意図的に落とす動機がない」と、彼は語った。

他プレーヤーの持続不可能なビジネスモデル

「この分野の他のプレーヤーがやってきたのは、数億ドル(数百億円)規模の資金を調達し、その資金を投じて赤字覚悟の安値でサービスを提供し、一気に市場に浸透させて開発者の間で事実上の標準ツールとなることを狙うやり方だ。その手法は、推論のコストをサブスクリプション料金に組み込み、実際の提供コストよりはるかに安い価格で提供するというものだ。しかし、これはまったく持続不可能なビジネスモデルだ」とエル=ババは話す。

一方Clineの利用者は、自分が何に対して料金を払っているのかを把握でき、使用するモデルを自由に選び、企業の機密コードなど、機密性の高いデータをどこに送るかを決められる。

ハッカソンをきっかけに生まれたスタートアップ

Clineは、2024年6月にAnthropicが開催したハッカソン、「Build with Claude」向けのサイドプロジェクトとしてスタートした。リズワンはこのハッカソンでは敗れたが、彼が作ったAIコーディングエージェントは将来性があると注目され、オンラインで人気を集め始めた。そして彼は同年11月、シードラウンドで500万ドル(約7億4000万円)を調達し、拠点をインディアナ州からサンフランシスコに移して会社を立ち上げた。「厄介なものを開けてしまったと気づいた」と彼は振り返る。

エンタープライズ市場への進出を狙う

そして今、ClineのAIコーディング分野のライバル各社は、これまでの安値戦略の限界に直面し、価格設定の見直しを迫られている。一方Clineは、エンタープライズ向けに製品を売り込む新たな機会を見出しており、「オープンソースこそが正しい道だと考えている」とリズワンは述べている。「Clineはオープンソースであるが故に、内部の仕組みをのぞき見て、製品がモデルとどのようにやり取りしているのかを把握できる。これは価格の透明性を確保する上で非常に重要だ」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事