アート

2025.08.08 14:15

多様性はどう設計できるのか。藤本壮介が建築で示す共創のプロトタイプ

2025年大阪・関西万博 《大屋根リング》 提供:2025年日本国際博覧会協会

展示の後半では、こうした思想がさらに別のスケールで展開されていく。大屋根リングの5分の1の展示(来場者はこの中を歩くことができる)や、宮田裕章とのコラボレーションによる都市構想の模型や映像、AIや環境といった社会課題と向き合うプロジェクトが並ぶ。「都市のかたちで社会のビジョンを描く」という藤本の姿勢は、建築の枠を超え、制度や価値観の次元にまで踏み込んでいる。

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それは、ビジネスにおいても無関係な問いではない。多様な個をどう受け入れ、響き合わせ、共鳴する仕組みを構築できるか。藤本が示す思想は、組織や社会のつくり方におけるヒント、または着想のきっかけになるものだ。

声なき声に、耳を澄ますということ

森美術館で同時開催中の「MAMプロジェクト033」でのアメリカ出身のアーティスト、クリスティーン・サン・キムによる「群衆のため息」という静謐なインスタレーションも必見だ。

展示空間に満ちるのは、世界各地の聴覚障害者66人による“ため息”の音。そのひとつひとつは短く、かすかな吐息のようでもありながら、耳を澄ませるほどに、身体の奥に染み込むような余韻を残す。ずっしりと重みのある「ため息」を通じて、キムは声なき声が放つ感情の密度や、社会との関係性を可視化しようとする。

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そのアプローチは、建築という物理的な空間で人と人の響き合いを描こうとする藤本の姿勢と、どこかで重なる。構造と空間の建築、そして音と余白の体験。手法はまったく異なりながらも、ふたりの作家は驚くほど近い場所にたどり着いている。

多様な価値観が響き合い、輝くという藤本が明るい未来を描く一方で、キムが見せるのは、声なき人々の静かなため息だ。わたしたちは本当に、すべての声に耳を澄ませているだろうか?

文=青山鼓

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