「異なるもの同士が、どうすれば響き合えるのか?」
いま社会や組織が直面しているこの難題に、建築という方法で挑んできた人物がいる。建築家・藤本壮介だ。森美術館で開催中の展覧会「藤本壮介の建築:原初・未来・森」は、都市や空間のデザインを超えて、これからの共存や関係のあり方を問い直す。
森美術館で開催中の展覧会「藤本壮介の建築:原初・未来・森」は、建築家・藤本壮介にとって初となる大規模個展である。
「藤本壮介は、建築の実作と構想、理念のすべてにおいて、現在の建築界で最も先鋭的な表現者のひとりです。この展覧会は建築を超えて、これからの社会をどうつくっていくかという、共生の思想を示すものです」
そう語るのは、森美術館の片岡真実館長。その言葉を導きとして会場をめぐると、建築という枠を超えたスケールで思索を重ねてきた藤本の歩みが、豊かに広がっていることに気づく。
空間を「囲みながら開く」。藤本の建築では、たとえば壁や屋根で囲まれた構造であっても、どこかが抜けていて、風や光、人の動きが自然に通り抜けていく。
用途のはっきりしない広間、外とも内ともつかない縁側のような場所、大小さまざまな部材が散らばりながら一つのまとまりを感じさせる構造。雑木林のように多様で、しかしどこか秩序がある空間。
今回の展覧会も、まさにそうした彼の建築観が“展示空間”として翻訳されている。あちこちに散在するプロトタイプを来場者が拾い集めながら、頭の中でつなぎ合わせていくような構成が特徴だ。
一本道の鑑賞ルートではなく、森の小道のように複数の入口と出口があり、同じ空間でも人によってまったく違う風景として立ち上がる。それは藤本がずっと描いてきた“未完成の建築”の一つのかたちを示している。
原初と未来を行き来する藤本の建築
藤本壮介は1971年、北海道生まれ。東京大学で建築を学んだのち、設計事務所などには属さず、1994年には23歳で個人での活動を開始したという異色の経歴をもつ。建築界では一般的に、名だたる建築家のもとで実務経験を積み、独立するという道が踏襲されるが、藤本は初めからひとりで挑み続けてきた。
最初期は小さな住宅やインスタレーションからはじめていた藤本は、2000年に「青森県立美術館」の設計案で、無名の新人建築家ながら2位に選出され、建築界で一躍注目を浴びる。敷地が雑木林に囲まれた青森の環境を読み解き、「局所的な秩序とカオスの共存」を軸に設計を展開。地形に沿い、行き当たりばったりの壁を屏風のように立てていく手法は、まるで「森の中を彷徨う」ような体験を創り出すものだった。



