スカイダンスとパラマウントの長期的な関係構築
スカイダンス、パラマウント、そしてラリー・エリソンの関係は、当初から密接だった。ラリー・エリソンは2008年、映画やテレビ番組など制作事業への投資を目的にサヨナラLLCを設立した。これは、彼がオラクル株を担保にした借入枠を確保し、その事実を開示し始めた数カ月後のことだ。また、デービッドとミーガンが、それぞれスカイダンスとアナプルナ・ピクチャーズの設立の準備をしていた2010年と2011年の時期とも重なる。FCCへの提出書類によれば、サヨナラLLCはエリソン一族がスカイダンスの支配権を保有するための法人の1つだった。
2009年、デービッド・エリソンは父親を含む出資者から3億5000万ドル(約518億円)を調達し、パラマウントと5年間にわたる映画の共同制作の契約を結んだ。スカイダンス初の長編映画となったのは、コーエン兄弟監督による2010年のアカデミー賞候補作『トゥルー・グリット』だ。製作費3800万ドル(約56億2400万円)に対し、全世界で2億5000万ドル(約370億円)以上を稼ぎ出す大ヒットとなった
規制当局への提出書類によれば、2024年半ば時点で、スカイダンスは計35本の長編映画を製作または共同出資しており、そのうち24本がパラマウントとの提携によるものだった。2023年、スカイダンスは約10億ドル(約1480億円)の売上高に対し、5400万ドル(約79億9200万円)の損失を計上していた。
なお、妹ミーガン・エリソンが率いるアナプルナ・ピクチャーズは、『her/世界でひとつの彼女』や『ゼロ・ダーク・サーティ』といった批評家に高く評価された作品を送り出したものの、数億ドル(数百億円)規模の債務を抱えて経営難に陥り、破産申請を検討する事態にまで追い込まれた。そして、最終的には父ラリーの支援により事態は収束したと報じられている。
スカイダンス設立やパラマウント買収で、父ラリーに金銭面で強く依存
ラリー・エリソンがオラクル株を担保に、アナプルナやスカイダンス、さらにはスカイダンスとパラマウントの合併資金を調達したかどうかは不明だが、弁護士のデイヴィスは、その可能性が高いと見ている。規制当局への提出書類によれば、2024年9月時点で、ラリー・エリソンは2億7700万株のオラクル株、つまり470億ドル(約7兆円)相当の株を担保として差し出しており、その用途は「個人的な事業投資に限って使用される、タームローンの担保」とされていた。
いずれにせよ、スカイダンスの立ち上げ、パラマウント買収において、デービッド・エリソンが父ラリーに金銭面で強く依存してきたという事実から、彼がオラクル株を直接的に自由に扱える状態ではない、あるいはまったく保有していない可能性すらある。
そしてもちろん、今後CEOとしてパラマウントを率いるのはデービッド・エリソンだが、舞台裏で彼と父親がどのように協力していくのかは誰にもわからない。


