トランプ政権との関係が与えた影響
トランプが2025年1月に大統領に就任したことも、合併成立に影響を与えた可能性がある。デービッド・エリソンは、合併承認前にトランプやFCC委員長のブレンダン・カーと面会した一方で、2024年2月にはジョー・バイデンの再選キャンペーンに約100万ドル(約1億4800万円)を献金していた。
父ラリー・エリソンの方は、トランプと長年の交流がある。2025年1月にラリーはホワイトハウスを訪れ、トランプとともに5000億ドル(約74兆円)規模のAIインフラ構想「スターゲート計画」を発表した。またトランプは同月、ラリー個人主導によるTikTok米国事業の買収計画にも前向きな姿勢を示し、同アプリの売却期限を9月に延長すると発表していた。さらにラリーは、スカイダンスが多様性・公平性・包摂性(DEI)ポリシーの廃止を誓約したことも背景に、パラマウント傘下のCBSを抜本的に刷新することを約束した。
「ラリー・エリソンはCBSをうまく経営すると思うし、この買収もいい取引になると思う。彼は素晴らしい人物だ」と、トランプは7月3日の集会で述べていた。
報道によれば、オラクルはパラマウントとスカイダンス両社のシステムを自社のクラウド上で運用するための交渉を進めており、その契約規模は年間1億ドル(約148億円)にのぼるという。ただし、この金額はラリー・エリソンにとっては取るに足らない額だ。彼の資産は2900億ドル(約42.9兆円)を超え、オラクルの配当だけで年間10億ドル(約1480億円。税引前)以上に及ぶからだ。
子どもたちへの信託と資産移転の不透明性
デービッド・エリソンが父が築き上げた巨大な富をどのように享受しているのかは、意図的に不透明にされており、詳細はブラックボックスとなっている。
ラリー・エリソンは1994年、オラクルの新規株式公開(IPO)の際に、同社の9万株を2人の子ども(当時3歳のデービッドと、生後2カ月の妹ミーガン)のための信託に入れていた。仮にこの信託が当時の株式を保持し続けていたとすれば、現在の価値は40億ドル(約5920億円)を超えていたはずだ。しかし、その後の記録はほとんど残っていない。この信託に関する記載は、1994年の目論見書の後にも、幾度か見られていたが、最後に確認されたのは2012年だった。このとき、デービッドとミーガンは信託を通じてそれぞれ93万3334株のオラクル株を保有していたと記載されていた。
しかしこれは、その後の株式分割を考慮に入れて計算した場合に、本来あるべき保有数のごく一部にすぎない。つまり、数百万株がすでに彼らに直接分配されたか、信託から他の資産に置き換えられたか、あるいは資産の分散化の一環として売却されたか、もしくはその組み合わせだったと考えられる。
ここで確かなのは、デービッドとミーガンは、ラリー・エリソンが初期から出資していたクラウドコンピューティング企業NetSuiteの株も保有していたということだ。オラクルが2016年にNetSuiteを93億ドル(約1.37兆円)で買収した際、デービッドは約3億7000万ドル(約547億6000万円。税引き前)を手にしており、現在ではその価値は最大で5億5000万ドル(約814億円)に達する可能性がある。


