エリソン家による議決権と資本の分離戦略
また、息子のエリソンの支配権については、追加の変更が加えられた。2024年9月時点のFCC提出書類では、父ラリー・エリソンが、パラマウント株取得に関与するピナクル・メディア・ベンチャーズにおいて、すべての議決権と出資比率を保有していたことが示されていた。これらの株式は、彼の推定15億ドル(約2220億円)の不動産資産の大半とオラクル株を保有する「ローレンス・J・エリソン改訂信託」を通じて管理されていた。
この書類によると、エリソン一族はピナクルの親会社サヨナラLLCを通じて、スカイダンスの株式67%、議決権の78%を保有していた(日本美術と日本建築の愛好家として知られるラリー・エリソンは、サヨナラ傘下の3つの子会社に、それぞれ「アオゾラ」「ヒコウキ」「フライト」という日本語に由来する名前を付けている)。
その後、2024年10月のFCCへの修正書類によって、ピナクル各社の議決権はすべてデービッド・エリソンが保有するように変更された(ただし、株式は父のエリソンが維持した)。
そして、2025年7月中旬にさらに変更が加えられ、合併後のパラマウントにおけるデービッドの議決権は50%に減少し、父ラリーが27.5%を得ることになった。つまり、これは単独でデービッドの決定を覆す株主はいない一方で、予算や主要な投資案件の承認には父の同意が不可欠になったことを意味する。ラリー・エリソンは、合併後のパラマウントにおける議決権付き株式のうち、エリソン家が保有する約26%分をすべて所有しており、さらに少なくとも10%の議決権を伴わない株式も保有しているとみられる。この比率は、既存株主が全額現金化を選択した場合の計算に基づくものだ。
加えて、2024年の最初の提出書類によると、エリソン親子はスカイダンス・エンターテインメント・グループを通じてさらに6.7%の株式を保有しているが、この持ち分の父子間の分配については明らかになっていない。
仮にラリー・エリソンが、2020年にスカイダンスに出資したジェリー・カルディナーレ率いるレッドバード・キャピタルと組んだ場合、両者で議決権の22.5%を握ることになるため、デービッドを抑え込むことも可能になる。さらに、逆にデービッドがレッドバードの支持を取り付ければ、父親に対抗することもできる。
税務メリットを考慮した所有構造の変更
ただ、このような変更の主な理由は、権力構造よりもむしろ金銭面にあると、少なくとも2人の関係者が述べている。「議決権の面では、デービッド・エリソンが自身の法人を通じて支配権を握るが、節税面のメリットは父のラリーが享受することになる」と語るのは、ロサンゼルスを拠点とするM&A専門弁護士のアレックス・デイヴィスだ。彼によれば、こうした変更はおそらく規制上の理由によるもので、珍しいことではないという。「父ラリーが所有する収益性の高い事業にとっては、この事業で出た損失や減価償却が課税上の恩恵となりえる」とデイヴィスは語った。
スカイダンスの広報担当者はコメントを控えた。レッドバード、デービッド・エリソン、FCCも、この記事の公開までにコメント要請に応じなかった。


