今後フェレロが直面し得るリスクとしては、トランプ関税が挙げられる。WKケロッグは一部製品をカナダとメキシコで生産しており、同社は2月に発表した年次報告書の中で、両国への追加関税を重要なリスクとして明記している。またトランプ大統領は、フェレロがサトウキビを主に調達しているブラジルに対して50%の関税を提案しており、これが発動すればコストの上昇は避けられない。さらに、ロバート・F・ケネディ・ジュニア米保健福祉長官が推し進める、合成着色料の規制強化も懸念材料だ。「フルーツループ」や「ラフィータフィー」など、同社の多くの製品には合成着色料が使用されているとみられる。加えて、2024年に過去最高値を記録したカカオ価格の高騰も、今後利益を圧迫する恐れがある。
こうした中、フェレロは原材料の調達網の多様化に取り組んでいる。2023年11月には、米国最大のヘーゼルナッツ生産地であるオレゴン州における生産効率向上を目的とした助成金に34万ドル(約5020万円)を拠出した。オレゴン州は、米国で生産されるヘーゼルナッツの99%を生産している。(フェレロはアルゼンチン、チリ、トルコ、イタリアからも調達している。)一方、ジョージ・グローバル・ヘルス研究所が2025年6月に公表した調査によれば、米国市場で販売されるフェレロ製品の約60%に合成着色料が含まれており、調査対象企業の中で最も高かったという。しかし、現時点でトランプ政権は食品メーカーに対して合成着色料の使用を規制する措置を講じていない。(WKケロッグは、自社製シリアルの85%に人工着色料が含まれていないことを明らかにしており、2026〜2027年度からは、学校で提供されるシリアルからも排除する方針を示している。)
2018年のインタビューでジョヴァンニは、間もなく食品業界に再編の波が訪れ、ごく少数の大手プレーヤーが市場シェアを争う構造になると予見していた。調査会社スタティスタのデータによれば、市場規模6200億ドル(約 91兆6000億円)の食品業界には依然として多くの企業が乱立しているものの、その中でフェレロのプレゼンスは着実に拡大しているという。「いずれ業界を牽引する企業が台頭するだろう」とかつて語ったジョヴァンニは、いまやその予言を自らの手で実現しつつある。


