経営・戦略

2025.08.05 09:00

4600億円でWKケロッグを買収、伊・菓子大手フェレロを率いるビリオネア経営者の正体

伊・菓子食品大手フェレロ会長 兼 筆頭株主ジョヴァンニ・フェレロ(写真左)。創業者で父ミケーレの葬儀にて(NurPhoto via Getty Images)

フェレロは2017年以降、米国市場で8件を超える買収を展開してきた。2018年にはネスレの米国菓子事業を28億ドル(約 4130億円)で取得し、翌年にはケロッグのクッキーとフルーツスナック事業を13億ドル(約1920億円)で買収している。これにより、「フェイマス・アモス」や「キーブラー」「ナーズ」「バターフィンガー」といったブランドを傘下に収めた。今回のWKケロッグの大型買収は、フェレロの米国での成長をさらに加速させるとみられている。WKケロッグの2024年の売上高は27億ドル(約3990億円)に達し、これによりフェレロ全体の売上高は10%以上の増加が見込まれている。

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「WKケロッグを傘下に収めることで、フェレロはコア事業である菓子・スナック製品に加え、米国のシリアル事業を新たにポートフォリオに加えることになる。フェレロの狙いは、WKケロッグが持つキャッシュ創出力と安定した売上基盤にあるとみられる。これにより、同社は米国市場での成長戦略をさらに加速させることが可能になるだろう」と、モーニングスターのアナリスト、エリン・ラッシュは指摘する。

イタリア随一の富豪でありながら、メディアの前にほとんど姿を見せないジョヴァンニは、現在ベルギーのブリュッセルに居住し、フェレロの本社はルクセンブルクに置かれている。彼は、1970年代後半に兄のピエトロとともにベルギーの寄宿学校に通い、1980年に米国ペンシルベニア州にあるレバノン・バレー・カレッジに進学してマーケティングを専攻した。

彼の父であるミケーレ・フェレロは、1997年にジョヴァンニとピエトロを共同CEO(最高経営責任者)に任命した。当時、同社は既に欧州全域に展開し、年商は48億ドル(約7090億円)に達していた。その後の14年間、兄弟はM&Aに頼ることなく、自社ブランドの成長に注力した。

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しかし、2011年に当時47歳だったピエトロが南アフリカでのサイクリング中に心臓発作で急逝し、さらに4年後の2015年には、父ミケーレが89歳で他界したことで、ジョヴァンニは経営の全権を握ることとなった。彼がまず取り組んだのは、父が保有していた株式を一族の相続人に分配し、会社の資本構造を再編することだった。また、成長戦略として買収に目を向け、同年には英菓子メーカーのソーントンズを1億7000万ドル(約251億円)で買収した。

ジョヴァンニは、食品・菓子業界での買収を加速させるため、2016年にベルギーに持株会社CTHインベストを設立し、同年12月にはベルギーのクッキーブランド「デラクレ」を非公開の条件で買収した。翌年には、創業家以外から初めてラポ・チヴィレッティをCEOに起用し、自身はエグゼクティブ・チェアマンとして長期戦略とM&Aに専念する体制へと移行した。フェレロは、現在もこの二頭体制のもとで事業運営を続けている。

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編集=朝香実

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