経営・戦略

2025.08.05 09:00

4600億円でWKケロッグを買収、伊・菓子大手フェレロを率いるビリオネア経営者の正体

伊・菓子食品大手フェレロ会長 兼 筆頭株主ジョヴァンニ・フェレロ(写真左)。創業者で父ミケーレの葬儀にて(NurPhoto via Getty Images)

伊・菓子食品大手フェレロ会長 兼 筆頭株主ジョヴァンニ・フェレロ(写真左)。創業者で父ミケーレの葬儀にて(NurPhoto via Getty Images)

イタリアの菓子・食品大手フェレロは7月10日、コーンフレークで知られるシリアル大手WKケロッグを31億ドル(約4580億円)で買収すると発表した。このディールは、過去1年で食品業界最大規模のM&Aであると同時に、会長兼筆頭株主であるビリオネア、ジョヴァンニ・フェレロにとって、約10年にわたる成長戦略の集大成とも言える。彼は家族経営の同社を、欧州の菓子メーカーから米国食品業界における大手企業へと押し上げてきた。

フェレロは、過去10年間でブラジルの菓子メーカーからデンマークのバタークッキーブランドまで、世界9ヵ国で少なくとも21社を買収している。フォーブスの推計によれば、今回の案件を含め、これらのM&Aに投じた金額は累計で130億ドル(約1兆9200億円)を超える。

「この数年、フェレロは世界で認知される自社ブランドと、米国に根ざしたローカルブランドを組み合わせることで、北米市場での事業拡大を進めてきた。今回の買収は、その成長戦略における重要なマイルストーンであり、将来のビジネス機会に対する当社の自信をさらに強固なものとする」と、フェレロは7月10日に発表した声明で述べている。

ジョヴァンニ・フェレロは、2015年に父ミケーレが死去したことを受け、経営の全権を握った。創業家3代目の彼は、ヘーゼルナッツ入りチョコレートスプレッドの「ヌテラ」や、金箔をあしらった包装で知られる「フェレロ・ロシェ」などを展開する同社の多角化と事業拡大を加速させるため、大型買収を推し進めてきた。この戦略は功を奏し、2015年から2024年8月までの間に売上高は約2倍の204億ドル(約3兆110億円)へと拡大し、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)も16億ドル(約2370億円)から30億ドル(約4430億円)へとほぼ倍増した。なお、フェレロに本件に関するコメントを求めたが、回答は得られなかった。

会社の成長とともに、フェレロ家の資産も大幅に増加した。現在60歳のジョヴァンニは同社株式の75%を保有し、その資産額は412億ドル(約6兆820億円)と推定される。これは、2018年にフォーブスのビリオネアリストに初登場した際の230億ドル(約3兆4000億円)から大きく拡大している。彼は欧州で6番目、世界で36番目の富豪だ。同社の残りの株式は、1946年にイタリア北西部トリノ近郊のアルバで同社を創業した祖父ピエトロの少なくとも5人の相続人が保有している。

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編集=朝香実

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