キャリア

2025.08.05 14:15

氷河期世代はなぜ「働かないおじさん」になるのか? 脱マンネリ・キャリア再開発のヒント

法政大学キャリアデザイン学部教授でプロティアン・キャリア協会代表理事の田中研之輔氏

さらに、中期キャリア計画では、3〜5年後の自分のあるべき姿を言語化する。肝心なのは、「キャリア資本」の蓄積を軸にすること。「キャリア資本」とは個人のキャリア形成のために必要な知識やスキル、経験、人脈などの総称で、具体的には、「ビジネス資本」(スキルや学歴、職歴など)や「社会関係資本」(職場や私生活での人間関係、地域社会でのつながりなど)、「経済資本」(金銭や資産、株式など)の3つに分けられる。中期キャリア計画シートでは、3~5年単位で獲得したいそれら3つの資本を書き出していく。

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 中期キャリア計画シートの例

田中教授の中期キャリア計画シート(田中研之輔 作成)
田中教授の中期キャリア計画シート(田中研之輔 作成)

ポイントは3つ。シートは月1回程度、定期的に見直すことと、できるだけ具体的かつ簡潔に表現すること、そして共有や公開を前提に作成することだ。3つ目の理由として田中氏は、企業が人的資本情報の開示を求められているなか、個人のキャリア中期計画も今後は開示が求められるようになっていくと考えるためだとした。期間は、個人で自由に調整できる。シートは未来のありたい姿を言語化し、現状との差分を探る材料になる。

「ビジネスでは、3〜5カ年で中期経営計画を立てる。企業はこれに沿って事業をグロースさせていくことをやっているのに、なぜ、最も大事な個人のキャリアの中期計画は後回しなのでしょう。自分の未来は自ら作っていけるという意識が、日本のビジネスパーソンには明らかに足りていません」(田中氏)

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中期キャリア計画シート 作成のポイント

 1.シートは月1回程度、定期的に見直すこと

 2.できるだけ具体的かつ簡潔に表現すること

 3.共有や公開を前提に作成すること

廃棄されるはずのワカメが、大臣賞受賞の逸品に

キャリア開拓の重要性に気づき、行動を起こしているミドルシニアが集うコミュニティの一つとして田中氏が挙げたのが、「ライフシフトプラットフォーム(LSP)」だ。LSPは企業で活躍してきた人材が、ライフプレナーとして活躍するために必要な学びと仲間づくりの機会、仕事の機会などを提供している。

2021年、電通の早期退職者200名超を1期生として設立され、その後、パナソニックやみずほフィナンシャルグループなど、他の企業からもメンバーが加わった。平均年齢は54歳。現在は延べ18社、約250名が参加する規模まで拡大している。

「LSPは異業種交流会ではなく、社会課題を発見し、それに対してどんな人が集まって、何ができるのかを考える、プロジェクト型のネットワーキングです。身を置き続けることで、マインドセットが組織内キャリア型からライフプレナー型へとじわじわ変わっていきます」(田中氏)

LSPのチームは、成果をあげはじめている。その例が、2022年発足の「売れる仕組み創造室(売れ創)」と宮城県気仙沼市にある水産加工会社ムラカミとの協業だ。売れ創は、リーダーの金井 毅氏と菊地哲哉氏が電通社員時代に培った地方での事業経験を生かし、まだ光が当たっていない地方に眠っている商品の開発、改良、販路拡大など、その名の通り商品が売れる仕組み作りをメンバーとともに支援している。

ムラカミが2025年5月に発売したワカメの加工品「チーズdeワカメ」のプロジェクトは、「売れ創」メンバーが同社専務から気仙沼の海が抱える深刻な問題を聞いたことから始まった。近年の温暖化による海水温上昇などで、変色や傷がつき、廃棄せざるをえないワカメが増え、その量が一日あたり約300〜500kgに上っていたのだ。

プロジェクトでは、廃棄されるはずだったワカメを用いて料理研究家の監修の下、洋食に合う加工食品を開発。同製品は、宮城県の水産加工品品評会で最高賞となる「農林水産大臣賞」を受賞した。 

ムラカミとLSPの売れ創が共同開発した「チーズdeワカメ」
ムラカミとLSPの売れ創が共同開発した「チーズdeワカメ」

 「地方には課題があり、人手が足りていない。一方、ミドルシニアにはネットワークや知見、ソリューションなどのキャリア資本がある。LSPは、メンバーの多様なキャリア資本と地方の課題をマッチングし、地方の資源を再価値化しています。

成果報酬型のビジネスモデルなので、地方の企業は初期費用を抑えて課題に着手できますし、LSPメンバーは地方に貢献し、報酬とやりがいを得られる。Win-Winの構図です」(田中)

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文=尾田健太郎 編集=大柏真佑実 撮影=西川節子

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