人工知能(AI)をコーディングに活用するスタートアップ、「Replit」が2億5000万ドル(約375億円。1ドル=150円換算)を調達し、評価額は30億ドル(約4480億円)を突破した。Replitは、サンフランシスコのベイエリアを拠点に「バイブコーディング」を推進する新興企業の1つ。バイブコーディングは、AIに目的や要件を自然言語で伝えるだけでソースコードを自動生成し、ソフトウェアを開発できるという手法を指す。
事情に詳しい関係筋によると、この調達ラウンドはPrysm Capitalの主導によるもので、Replitの評価額はわずか2年強で2倍以上に上昇した。同社の評価額は、2023年4月に9700万ドル(約146億円)を調達した際に11億6000万ドル(約1740億円)とされていた。
ReplitとPrysm Capitalはコメントを控えた。
ここ数年で、大規模言語モデル(LLM)を用いたコード生成の機能は大幅に進化し、簡単な文章による指示を入力するだけで、実際に動作するアプリやウェブサイトを構築できるようになった。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは最近、同社の新たなコードの最大30%がAIによって書かれていると述べていた。
また今月初めには、グーグルが開発者向けのAIコーディングツールを手がけるWindsurfに24億ドル(約3600億円)を支払って主要な幹部を引き抜いた。Windsurfの主要な競合製品、Cursorを手がけるAnysphereの評価額は、6月の調達ラウンドで100億ドル(約1.5兆円)に急上昇していた。
Replit共同創業者のアムジャド・マサドCEOは6月、同社AIコーディングツールのローンチから1年足らずで、年間経常収益(ARR)が1億ドル(約150億円)に達したと発表した。競合企業も爆発的な成長を遂げており、スウェーデンのスタートアップLovableは、2023年11月のローンチからわずか8カ月で年換算のサブスクリプション収益が1億ドル(約150億円)に達したと今月初めにフォーブスに語っていた。
投資家はバイブコーディング分野に高い関心を示しており、Lovableはベンチャーキャピタル(VC)のAccelが主導したラウンドで2億ドル(約300億円)を調達した。ベイエリア拠点の同社競合StackBlitzも、1月に8000万ドル(約120億円)を調達していた。ブルームバーグは以前、Replitが30億ドル(約4500億円)の評価額で調達を交渉中だと報じていた。
Replitは3000万人以上のユーザーにサービスを提供したと主張しているが、一夜にして成功を収めたわけではない。同社は、元フェイスブックのエンジニアのマサドと共同創業者が2016年に共同創業しており、当初は協業型コーディングを支援するプラットフォームの構築を目指していた。ReplitがAIコード生成ツールをリリースしたのは昨年9月のことで、年末までにARRが1000万ドル(約15億円)に達したとマサドは語っている。
「暴走」に関するクレームも
同社はトラブルにも直面した。投資家のジェイソン・レムキンは最近、ReplitのAIが「暴走」し、彼が2週間かけて構築したプロジェクトのコードベースを削除したと主張した。「私はバイブコーディングがまだ未完成で新しいものであることは理解しているが、このツールが本番データベースを上書きしてしまったことは許しがたい」と彼はX(旧ツイッター)に投稿した。レムキンはまた、Replitがミスを犯したことを隠して「嘘をついた」とも主張した。
マサドは、この投稿を受けて「このミスは、容認できないものであり、本来あり得ないことだ」と返信し、プラットフォームに安全策を追加していくと述べた。Replitはこれ以上のコメントを控えた。
どの会社もAnthropicの同じモデルを使っている
Replitやバイブコーディング分野の競合にとって、より大きな今後の課題は、グーグルやマイクロソフトのようなハイテク大手だけでなく、これらのコード生成ツールの裏側で動いているLLM開発元のAnthropicのような企業が、この市場に乗り込んでくることだ。
グーグルはすでにFirebase Studioという独自のプラットフォームを展開しており、Amazonは7月初めにKiroという独自ツールをリリースした。また、Anthropicも「Claude Code」と呼ばれるサービスを立ち上げた。
レムキンは今でもReplitの利用を続けているという。世界最大級のSaaSカンファレンス「SaaStr(サースター)」の主催者で投資家の彼は、「どの会社もAnthropicの同じモデルを使っている」とフォーブスに語った。「私は今、全体的な開発スピードを大幅に落としている。以前の20%の速度でバイブコーディングをしている」と彼は述べている。
(forbes.com 原文)



