経営・戦略

2025.07.31 12:00

「原点への回帰」を迫られる高級ブランド、2021年以降の市場拡大のツケが顕在化

高級ブランド店が軒を連ねるイタリア北部ミラノのビットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア。2023年5月31日撮影(Giulio Benzin / Shutterstock.com)

そのやり方をグッチと比較してみよう。かつては世界中の若者の間で人気を博していたグッチは、刺激的な広告や文化的な瞬間に大きく依存していた。だが、派手な広告の勢いがなくなったらどうなるのだろうか? グッチは現在、売上と顧客の激減に直面しており、存在感を取り戻すのに苦戦している。過剰な露出や流行の追いかけは短期的には注目を集めるかもしれないが、長期的な資産価値を築くことはほとんどない。

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伊高級ブランド「ミュウミュウ」のように、たとえ現在好調であっても慎重であるべきだ。口コミで瞬く間に人気に火がつくことは戦略ではない。流行は刺激的な瞬間をもたらすことはできるが、ブランドを維持できるのは信頼性だけだ。つまり、最近の高級志向の消費者は進化しているのだ。高級ブランドの顧客の目は肥えており、流行に左右されることなく、感情的なつながりや長期的な価値を重視するようになってきている。消費者はただ製品が欲しいわけではない。特に高額な商品ともなればなおさらだ。消費者は時代を超越した価値があり、耐久性に優れ、現在も将来も特別な気分にさせてくれるものに夢中になったり投資したりしたいと考えているのだ。これは大々的な宣伝や大衆の認知度を高めようとすることに抵抗し、職人技術や物語性、特別感に焦点を当てることを示している。

今こそ高級ブランドは原点に立ち返り、意図や造詣の深さ、職人技術といったものに再び焦点を当てるべきだ。マーケティングを通じた物語性はブランドの遺産や価値感を尊重しつつ、欲望を駆り立てるものでなければならない。流行や大衆の認知度ばかりを重視し、真の意味とは無縁のマーケティング活動にいそしむ高級ブランドは、何をもって本物だと言えるのだろうか? 実際に起こっているのは、高級ブランドに対する消費者の感情が変化しているということだ。つまり、ちょっとした目新しさや長期的な価値を持つ投資のように感じられるものにお金を費やすことへの疲労感がたまり、関心が薄れつつあるのだ。

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ラグジュアリーブランドは「憧れる消費者」より「高級であることの本質」を優先すべき

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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