日本から見た世界のプロスポーツ・チームの人気の風景が、地殻変動を起こしている。昭和を生きた世代からすると「ミスター・プロ野球」長嶋茂雄さんが亡くなり、まさに時代は完全なる終焉を迎えたと痛感。その昔、子どもが好きなものとして「巨人、大鵬、玉子焼き」と例えられたが、かつて「球界の盟主」と謳われたその読売ジャイアンツも、その座を完全に明け渡した。
巨人をはじめとし国内プロ野球チームは、長らく日本人の人気スポーツ・チームとして不動の地位に君臨して来た。だが、突如としてその頂点に躍り出たのは、ロサンゼルス・ドジャース(MLB)だ。2024年、ドジャースは日本のスポーツファンにとって最も愛されるチームとなり、その背景には、稀代のスタープレイヤー、大谷翔平選手の存在があることは疑いの余地がない。「ニールセン・ファン・インサイト」の最新データが示すこの驚くべき変化は、いち選手の移籍が、日本国民のスポーツに対する関心と感情をいかに揺り動かすかを鮮やかに描き出している。
データが語る「ドジャース現象」の衝撃
ニールセンスポーツが毎月1000人規模で実施しているオンライン定量調査「ニールセン・ファン・インサイト」は、16~69歳の男女(一般消費者)を対象に、日本のスポーツファンに関するグローバル定点調査を行っている。このデータに基づき、2024年1月から12月にかけて聴取された情報から導き出された「日本人から見た世界の人気プロフェッショナル・スポーツチームTOP 50」のランキングは、日本スポーツ界における現在の「熱狂の中心」を浮き彫りにした。
ランキングのトップに輝いたのは、33%のファン率と23%のコアファン率を記録したロサンゼルス・ドジャース(MLB)。これは23年のファン率9%、コアファン率3%から驚異的な飛躍、わずか1年でファン率が約3.7倍、コアファン率に至っては約7.7倍に膨れ上がった。22年と比較すると、ファン率は約6.6倍(5%から33%)、コアファン率も約23倍(1%から23%)という途方もない伸びを見せた 。この数字は、大谷のドジャース移籍による「Show Time現象」と呼ぶにふさわしい。しかも移籍初シーズン、打者に専念することで前人未到メジャー史上初となる「50-50」(同一シーズンに50本塁打、50盗塁)を達成、しかもワールドシリーズ制覇まで果たしただけに、その人気もやむをえまい。
かつて、日本国内のプロ野球チームや、サッカー・野球の日本代表が上位を占めるのが常であった。実際、本ランキングでも、2位に野球日本代表(侍ジャパン)、3位に読売ジャイアンツ(NPB)、4位に阪神タイガース(NPB)、5位にサッカー日本男子代表が続く 。これらのチームは依然として高いファン率を誇るものの、ドジャースの急上昇ぶりは、その存在感を霞ませるほどだ。
特に23年にはファン率24%、コアファン率15%で2位に位置していたロサンゼルス・エンゼルス(MLB)が、大谷選手の移籍に伴い、24年にはファン率11%、コアファン率2%へと大きく順位を落としている点も「大谷効果」がファン層の動向に直接的な影響を与えていることを裏付けている 。



