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音楽、メディア、エンターテインメントビジネスを担当。

soupstock / Bigstock


近年、世界各地で空前の盛り上がりを見せている音楽ジャンル、EDM(Electronic Dance Music)。2014年度の市場規模は約19億ドル(約2256億円)にまで拡大したと言われている。その中心的アーティストであるスクリレックスとディプロがこの夏、仲間のミュージシャンらとカナダ8都市をまわるツアーを敢行した。

興奮のあまり叫ぶファンたち、心臓に響く重低音、大規模なフェス会場といった典型的なEDMイベントと比較すると、彼らのツアー「Full Flex Express」には決定的に異なる点が一つあった。なんとツアーそのものが大陸を横断する列車の旅だったのだ。

1988年生まれ、ロサンゼルス出身のスクリレックスが発案し、今年2回目を迎えた「Full Flex Express」は、1970年に開催された伝説の移動式ロックフェス「フェスティバル・エクスプレス」へのオマージュだ。かつてジャニス・ジョプリン、グレイトフル・デッド、ザ・バンドらが車内でジャムセッションに興じたように、「Full Flex Express」の乗客たちもレコーディングスタジオ(レッドブルが提供)を完備した特別列車で移動しながら、さまざまなユニークなアイデアを出し合った。

同ツアーでカナダのエレクトロ・デュオ、ゼッズ・デッドのビジュアル演出を担当したVJのイアン・サイモンは「あるグループはアロマテラピーを取り入れた演出を話し合っていた」と振り返る。
「会場に巨大な扇風機を設置して何種類かのアロマオイルを用意し、曲ごとに違う香りを放つんだ。どのDJも他との差別化に必死だよ」

EDMシーンはこの数年間で劇的に変化した。ファン人口が増えるにつれて巨額のマネーが流れ込み、ラスベガスからイビザまで世界各地のクラブやフェスが腕のいいDJを確保するために破格のギャラを提示し始めた。

2012年、最も稼いだEDMアーティスト10組の収入総額は1億1600万ドル(約141億円)だったが、2013年はその2倍以上に急増した。しかしその後、EDM市場は早くも成熟期に入った。2014年の同収入総額は前年比11%増の2億6750万ドル。2015年は前年比2.5%増の2億7400万ドルで、総額は伸びているものの、増加ペースは落ちている。DJの飽和状態が起きている今、ライバルの一歩先を行こうとするならばステージ演出に多額の費用を投入するのがベストなのだ。

特に増えているのが映像や照明にかける金額だ。数年前までそれらのコストの相場はDJの出演料の約20%ほどだったが、最近は30-40%にあたる金額を投入するDJも多く、ポップミュージックのコンサートと変わらない。

この12ヶ月間で1600万ドル(約19億円)を稼ぎ、フォーブスの「世界で最も稼ぐDJランキング2015」10位に入ったオランダのDJ/音楽プロデューサー、アフロジャックも「自分自身の身なり、ライブ、会社……どれも維持するのに必要なコストが桁違いに増えている」と話す。

現在、EDMライブの照明を操るライティングディレクターは週に少なくとも2000ドルを稼ぐといわれる。VJ映像の1分あたりの単価は約1000ドルだ。サイモンによれば、ライティングディレクターとVJのギャラはこの2年ほどで25—50%高騰しているという。同時に彼は「今後はセットに大金が注ぎ込まれていくだろう」とも推測する。

既にその傾向は多くのショーで見られる。たとえばカナダの人気DJ/プロデューサー、デッドマウスのトレードマークであるネズミの被り物や、スウェーデン出身のスーパースターDJ、アヴィーチーの巨大な頭部を模したDJブースなどは、彼らの世界観を打ち出す上で大きな役割を担ってきた。

アヴィーチーといえば、マイアミで行われた世界最大級のEDMフェス「Ultra Music Festival」の期間中、高級リゾートホテルをまるごと「アヴィーチー・ホテル」に作り変えたことも記憶に新しい。彼はそこで連日連夜イベントを開催するだけでなく、食事から客室のアメニティに至るまで完全にオリジナルなホテル空間を出現させたのだ。

アヴィーチーのマネージャーであり、他にも数人の気鋭アーティストを抱えるAt Night Managementの設立者アッシュ・ポアノウリは、「お祭り騒ぎになるライブツアーこそ、付加価値を生み出すチャンスだ」と言う。「CDJ(DJ用のCDプレイヤー)と安っぽい映像を持ち込むだけでは不十分だ」

冒頭の「Full Flex Express」も、その付加価値を高める企みの一つだ。制作費は普通のツアーよりも高くつくが、EDMファンに与えるインパクトは莫大だ。スクリレックスの言葉を借りれば、DJたちは「職業柄、何が効果的かを知っている」はずだ。問題は、彼らが費用対効果についても先見の明があるかどうか。結局のところ、EDMは視覚効果が不可欠な音楽なのだ。

「EDMというのは多くの場合、ガリガリの白人の兄ちゃんがラップトップの後ろに立っているだけだから、凝った演出が必要なんだ」とサイモンは言う。「そうでもしなければ観客は退屈するよ」

世界で最も稼ぐDJランキング2015
1位:カルヴィン・ハリス/Calvin Harris 6,600万ドル(約80億円)
2位:デヴィッド・ゲッタ/David Guetta 3,700万ドル
3位:ティエスト/Tiësto 3,600万ドル
4位:スクリレックス/Skrillex 2,400万ドル
4位:スティーヴ・アオキ/Steve Aoki 2,400万ドル
6位:アヴィーチー/Avicii 1,900万ドル
7位:カスケード/Kaskade 1,800万ドル
8位:マーティン・ギャリックス/Martin Garrix 1,700万ドル
8位:ゼッド/Zedd 1,700万ドル 
10位:アフロジャック/Afrojac 1,600万ドル
11位:デッドマウス/Deadmau5 1,500万ドル
11位:ディプロ/Diplo 1,500万ドル

文=ザック・オマリー・グリーンバーグ(Forbes)/ 編集=海田恭子

 

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