テクノロジーの世界では、1つの問題を解決すれば新たな問題が生じることが珍しくない。コードの作成に人工知能(AI)ツールが広く活用されるようになった現在も、その状況は続いている。ある推計によれば、世界で書かれるコードの半分以上がすでにAIによって生成されており、その結果、ソフトウェア開発のスピードとボリュームは飛躍的に高まっている。
しかしその一方で、生成されたコードのすべてをリリース前に厳格に検証するテスト工程にボトルネックが生じている。この問題は、とりわけモバイルアプリ市場で深刻だ。開発者たちはより多くの製品を、より速くリリースするよう求められている。
調査会社Statistaによると世界のモバイルアプリ市場は、今後5年間で平均約9%の成長を続け、2027年には7560億ドル(約112兆円。1ドル=148円換算)に達する見通しだ。アップルのApp StoreとグーグルのPlay Storeにおける四半期あたりのアプリのダウンロード件数は、合計約350億回にのぼっている。
開発者たちは、アプリが1回ダウンロードされるたびに不具合のリスクに直面する。そして、不具合が発生した場合は、修正にコストがかかるだけでなく、顧客の製品への信頼を損ない、評判に悪影響を及ぼすことになる。テクノロジー企業Itobuzの推定によると、開発費が10万ドル(約1480万円)のアプリの不具合修正のコストは多くの場合、年間で最大2万4000ドル(約355万円)のコスト追加につながるという。
開発したアプリの動作テストにもAIを採用
当然ながら、このようなAIで開発したアプリの動作テストに、再びAIの力を借りようとする動きが進んでいる。Verified Market Reportsの予測では、2024年に54億ドル(約7992億円)とされたアプリテスト市場は、2033年には200億ドル(約3兆円)以上に拡大する見通しで、その多くがAIが主導するテストサービスによって支えられるという。
これらテスト工程のうち、GUI操作テスト分野でもっとも知られているのは、オープンソースのフレームワーク「Appium」だ。AppiumはAndroidやiOS、Windowsなど複数プラットフォームのアプリを対象に、GUI操作テストを自動化するというもので、すでに10年以上の歴史がある。また近年ではMabiやMaestro、Test Rigorといった新興勢力も台頭している。



