トランプ政権によるDEIポリシーへの攻撃は、スカイダンスとパラマウントにとどまらない。このような政策について人々がどう考えるかは別にして、今後はトランプ政権が「差別のない運営」に対するパラマウントの取り組みが十分かどうかを判断することになる。そして今後、同政権が同社の方針や実務を審査し、承認する立場にあるのだ。それは「自由放任主義」とはまったく逆の構図だ。
トランプと彼が支配するFCCがこれで、この件から手を引くと思ったら大間違いだ。今後は、CBSの報道に「偏向」が疑われるたびに、エリソン親子に首都ワシントンから電話がかかってくる可能性は十分にある。自身に不利な報道をすべて「フェイクニュース」と呼んできた大統領に対し、CBSニュースは政権の失策や景気後退、気候変動に関する災害、将来のスキャンダルをどう伝えるのだろうか?スカイダンスやパラマウント、CBSの内部の誰が、権力に真実を知らせるのだろうか?
新会社は最終的にどのような姿になるのか?
メディア業界全体を見渡せば、将来に向けて企業の「規模の適正化」を図ろうとする狂騒が起きている。たとえばコムキャストは、NBCユニバーサルの旧来のケーブルネットワーク群を切り離してVersantに移す予定であり、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは、ストリーミング&スタジオ部門とグローバルネットワーク部門への分割を進めている。一方、A&Eの売却や、ディズニーがESPNへの出資者としてナショナル・フットボール・リーグ(NFL)を迎え入れようとしている動きもある。
FCCによる合併承認の発表では、この承認によりスカイダンスがパラマウント全体の事業強化に向けて予定していた15億ドル(約2220億円)の新規投資が実行可能になると述べられていた。デービッド・エリソンは新生パラマウントを「テック・ハイブリッド」に位置づけ、「クラウド上の新たなスタジオ」や人工知能(AI)の活用を掲げている。
興味深いことに(ただし、これはおそらく偶然ではない)この分野における最初の発表は、パラマウントがクラウド基盤の整備に向けてラリー・エリソンが会長を務めるオラクルに1億ドル(約148億円)を支払うというものだった。しかし、Netflixやアマゾン、グーグルといったメディア支配を強める巨大テック企業と肩を並べる技術力をパラマウントが築くには、長く困難で高コストな闘いが待ち受けている。
今回の承認プロセスでは、パラマウントのケーブルネットワーク群はほとんど注目されなかったが、ここは再編の準備が整っている巨大な領域だ。株式市場は、旧バイアコム系ネットワークの一部またはすべてが、近くスピンオフや売却に向かうと予想している。読者の中には、今もコメディを中心としたケーブルテレビ、コメディ・セントラルを観ている人がいるかもしれない。だが、MTVクラシックやNickMusic、BET Her、VH1といったブランドに、どれほどの価値と視聴者が残っているだろうか? 仮にスピンオフが実現したとして、その後の計画は見えないし、これらの資産を欲しがる声がどれだけあるのかも疑わしい。


