北米

2025.07.30 16:00

前途多難の「新生パラマウント」、トランプからの苦情電話にどう対応するのか?

Images by Marc Guitard/Getty Images

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米映画製作会社スカイダンスによる、メディア大手パラマウントの買収が先日ついに承認されたが、このドラマはまだ始まったばかりだ──。

米連邦通信委員会(FCC)は、2年にも及んだ困難な交渉の末に、スカイダンス・メディアによるパラマウント・グローバルの買収を承認した。スカイダンスを率いるCEOのデービッド・エリソンは、多額の資金を父親であるオラクルCEOのラリー・エリソンから提供されている。

しかし、パラマウントが子会社であるCBSテレビの報道番組『60ミニッツ』をめぐってトランプ大統領から起こされた訴訟で和解し、スティーヴン・コルベアの人気トークショー番組(トランプ政権を批判し、笑いの対象にしていた)が突如打ち切られた後に、政府の承認が下りた激動の数週間は、この買収後に静かな時期が訪れることを予感させるものとは言い難い。

スカイダンスとメディア業界全体は、これからさらなる激しい乱気流に直面することになるだろう。ここでは、そのいくつかの注目ポイントを紹介してみよう。

トランプからの「苦情」の電話にどう対応する?

今回の政府による承認そのものが、将来の対立の枠組みを作るものでもある。FCCのブレンダン・カー委員長はこの合併承認にあたり、「私はスカイダンスが、かつて名門だったCBSの放送ネットワークに大きな変化をもたらすと誓ったことを歓迎する」と述べていた。しかし、この「大きな変化」を誰が監視するのか? FCCは規制条件の説明文にこう記している。

・「偏りのない報道へのコミットメント
この契約では、CBSのニュースと娯楽番組の両方が「政治的・思想的なスペクトルにわたる多様な視点を体現し、CBSの報道が公正・中立・事実に基づいたもの」であることが求められている。スカイダンスは、この契約に基づき偏向に関する苦情を評価する新たな「オンブズマン」の設置を約束しなければならない。

・「差別的なDEIポリシーの廃止」
スカイダンスは、合併後のパラマウントで以前のような多様性・公平性・包摂性(DEI)ポリシーを廃止することを約束しなければならない。同社は、「機会の平等と差別のない運営」を行うことにコミットし、その実現のためのポリシーと施策を実施する必要がある。

共和党はかつて、政府による企業への過度な干渉に反対していたことを覚えているだろうか? 今回の件では、トランプ政権がCBSのコンテンツ(承認文書ではニュースとエンターテインメントの両方が対象とされている)が「十分な多様性」を備えた公正なものであるかを判断することになる。そしてトランプ政権が判断を下すのはCBSの「報道」であり、オピニオン記事ではない。「誰にとっての公正さなのか?」と問いたくなるかもしれないが、その答えは明白だ。

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編集=上田裕資

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