国内の成長産業及びスタートアップに関する幅広い情報を集約・整理し、検索可能にした情報プラットフォーム「STARTUP DB」は7月30日、「【2025年 上半期】国内スタートアップ投資動向レポート」を公表した。国内スタートアップエコシステム全体の資金調達トレンドから、エクイティなど調達手法別の傾向、それにIPO・M&AなどのEXIT状況などを俯瞰し、数字とともに浮き彫りにしたもの。本記事では、同レポートをもとに、セクター別の資金調達と従業員数について解説する。
国内セクター別資金調達概況


スタートアップをセクター別に分類し、20年から25年上半期の資金調達金額・社数を集計した。資金調達金額では、SaaSが1326億円、AIが953億円、資金調達社数はSaaSが335社、AIが320社で、SaaS・AIがトップを牽引した。
AI分野に関しては、日米間での構造的な差が依然として見られる。米国では基盤モデルを開発する企業が多く、調達規模も大きくなる傾向があるのに対し、日本では基盤モデルを手がける企業は限られており、応用領域であるアプリケーションが強みとなっている。
その代表的な事例として、クラウド型電子薬歴・服薬指導ツール「Musubi」を提供するカケハシがシリーズDで140億円を調達。また、製造業向けAIデータプラットフォームを提供するキャディはシリーズCエクステンションで91億円を調達し、それぞれAIを活用したアプリケーション領域を牽引した。
SaaS・AI以外でも、HealthTech/MedTech、製造、エネルギー・環境といったセクターが上位にランクイン。HealthTech/MedTechではカケハシ、製造ではキャディに加え、アイリスの20億円の調達などが代表例だ。エネルギー・環境では、太陽光発電システムの第三者所有サービス「シェアでんき」を提供するシェアリングエネルギーがシリーズBで40億7000万円を調達した。




国内のセクター別資金調達金額および社数の推移では、AIとSaaSがいずれも上位を占めていた。そこで今回はAIとSaaSに絞り、それぞれがどの業界で特に資金を集めているかを可視化するために、「AI×他業界」「SaaS×他業界」ごとに調達金額および社数を集計した。
25年上半期において、AI領域の中でも特に医療・ヘルスケア、製造、教育分野が特に高い調達実績を示した。202億円を調達したAI×医療・ヘルスケアでは、生体物質を高い精度で検出する基盤技術「NANO IP®︎」を開発・提供するCraifがシリーズCエクステンションで33億円を調達。製造は173億円で着地しており、キャディが代表的。教育の調達金額は89億円に達し、教育事業者向けのDXプラットフォームを展開するManabie JapanがシリーズBで33億円を調達している。
一方SaaS領域では、特に医療・ヘルスケア、小売、製造といった業界で資金調達金額が活発化した。276億円を調達したSaaS×医療・ヘルスケアでは、AIを用いた問診サービスを展開するUbieがおよそ37億円を調達した。小売では238億円となり、店舗のキャッシュレス決済やネットショップ構築を支援するSTORESが28億円の調達を実施。212億円を調達した製造では、ARグラス用ディスプレイを開発するCellidがシリーズCエクステンションにて31億円を調達した。



