オード・トロントに宿泊する人たちは、半数近くがアートを目当てに客室を指定し、予約をしているという。また、このホテルでは、アートはただ飾られているだけではない。コミュニティの「媒介」となっている。例えば、ホテルの屋上で開催しているワークショップ、「サマー・アートクラブ」は、制作や会話を通じて、地元のアーティストと参加者たちを結び付けている。
アートの新たな役割
各国、そして国際的な新興アート市場において、ホテルは文化におけるステークホルダーになると同時に、地元の企業やコミュニティが行う活動のパートナーにもなっている。
そうしたホテルは理論的、またはエリート主義的な参入障壁に挑戦する形で一般の人々に扉を開くことで、休息の場の提供と商業のために設計された空間にも、「コミュニティの形成と思考の刺激」が可能だということを証明している。
さらに、アートを取り入れたホテルは、標準化されたラグジュアリーの時代においても文化は単なるアメニティではなく、人々を引きつけるものであることを証明している。
このように考える人たちのひとり、前出のラムズビックは、「私たちを差別化する要因は、アートです」と明言する。また、21世紀ミュージアム・ホテルのキュレーションを手がける執筆者でキュレーター、批評家でもあるチャールズ・ムーアは、「最高のホスピタリティの体験は、ただそこに宿泊するということだけでなく、その場所の精神に浸るということです。その実現につながる最短距離の近道を提供するのが、アートなのです」と述べている。


