欧州

2025.07.30 13:00

ウクライナ軍で戦場ロボットが急増中 多用途無人車両TerMIT、年内に2000両生産

重機関銃を搭載したウクライナ製無人車両「TerMIT(テルミット)」。ウクライナ海兵隊第36独立海兵旅団が2025年4月に通信アプリ「テレグラム」に投稿した動画より

重機関銃を搭載したウクライナ製無人車両「TerMIT(テルミット)」。ウクライナ海兵隊第36独立海兵旅団が2025年4月に通信アプリ「テレグラム」に投稿した動画より

テルミット(TerMIT)」は、ウクライナ国防省によって登録・承認された最新の軍用ロボットだ。ウクライナのテンコア(Tencore)社が製造するこの小型装軌車両は、ウクライナの戦場に数多く登場するようになっている無人車両(UGV。陸上無人機、無人地上車両とも)のひとつである。テルミットのようなUGVは以前は少数しか投入されていなかったが、今年は低コストUGVの生産数が百単位から万単位に拡大するのにともない、大量配備が進む見通しとなっている。

ウクライナ軍ではすでに20ほどの部隊がテルミットを運用しているが、政府によって正式に認証されたことで指揮官たちは公式ルートを通じて大量に発注できるようになった。テルミットの需要があるのは、それがまさに兵士たちの求めているものを提供してくれるからだ。このように需要に応じた供給が迅速にできている裏には、効率的な開発プロセス、前線との緊密な連携、そして投資資金の存在がある。

戦時モードの技術開発

西側諸国では新たなUGVの調達には何年もかかることがある。ウクライナはそんな悠長なことをしていられない。

「ウクライナはR&D(研究開発)でも『戦時モード』で動いています。前線から直接フィードバックを得て、官僚的な手続きを省き、“使えるもの”に集中しています」と、テンコアの共同創業者であるマクシム・バシリチェンコ最高経営責任者(CEO)は筆者に語った。「他国では何カ月もかかるような決定が、こちらでは数日で行われます。それに加えて、政府、ボランティア、民間部門が密接に協力しており、エンドユーザーである兵士たちも最初から関わっています」

テルミットに関して最初から目標にされていたのは、射撃などの攻撃を浴びるラインから兵士遠ざけることのできる機材を開発することだった。テンコアは「ロボットに戦わせよう」をスローガンに掲げる。

さまざまな危険な任務を人間に代わってロボットに担わせるには、高度にモジュラー(組み換え容易な構成単位)化され、柔軟性の高い仕様にする必要がある。これがテルミットの設計の肝だった。テルミットは兵站運搬車として、最大300kgの物資を積み、FPV(一人称視点)ドローン(無人機)が飛び交うなかを抜けて最前線に運べる。また、防御陣地の前方に出て地雷を設置したり、味方の襲撃(アサルト)に先立って敵の地雷原を除去したりすることもできるほか、武器(機関銃やグレネードランチャー)を搭載して火力支援を行うことも可能だ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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