「ウラン-9やマルケルといったロシアのUGVプロジェクトは高額で、集中型で、戦場の現実とかなり乖離しています」とバシリチェンコは指摘する。「対照的に、ウクライナのエコシステムは分散型で機動的、そして前線の必要に応じて動いています。ウクライナのUGVは戦闘で実証され、絶えず進化していますが、ロシアのUGVは概して理論上のものにとどまっています」
ウクライナが兵士の命を守るためにUGVの開発と配備を急ピッチで進めているのに対して、ロシアにそうした切迫感はない。
MITSのボイルはこう説明する。「ロシアでは、兵士は軍にとって人間としての価値がなく、戦争の道具にすぎません。ロシアは兵士を『消耗品』と見なしているのです。ウクライナは兵士を家族の一員と考えています。だからこそ、ウクライナではイノベーションへの動機づけがロシアよりもずっと強いのです」
ほかの国々では、UGVの開発ペースは格段に遅い。
「ウクライナでは前線と工場の現場がNATO(北大西洋条約機構)の国よりも密接に結びついており、そのため製品の改良サイクルもはるかに短くなっています」とボイルは言う。
これはコストの問題でもある。
ボイルによれば、ウクライナではUGVを1両あたり最低5000ドル(約74万円)程度で製造できるという。
テルミットの価格は、NATOの同等装備の10分の1程度かもしれない。UGVメーカーが価格を公表する例はあまりないが、エストニア・アラブ首長国連邦(UAE)系のミルレム・ロボティクス(Milrem Robotics)社は2024年、UGVの「Type-X」と「THeMIS(テミス)」計60両をUAEに2億ドル(現在の為替レートで約300億円)超で納入する契約を結んでいる。1両あたり300万ドル(約4億5000万円)あまりということになる(編集注:THeMISは陸上自衛隊も3両購入している)。これらのUGVはテルミットよりもかなり大型で高性能とみられるので、直接の比較はできない。いずれにせよ、こうした高価なハードウェアは、兵站用UGVがロシアのFPVドローンによって頻繁に攻撃されるような環境には向いていない。
人間をUGVで代替する意義は、人間と違ってUGVは消耗できるという点にある。とはいえ、それはUGVが大量取得できるほど安価になって初めて可能になる。
テンコアは2025年末までにUGVを2000両生産する計画だが、これはほんの始まりにすぎない。また、ほかの多くのウクライナ企業も独自設計のUGVを次々と生み出しており、最も成功したUGVにさらに資金と注文が集まることになるだろう。近い将来、ウクライナの戦場でUGVはますます増えていくと見込まれる。


