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2025.07.30 12:00

大富豪の過半数が富裕税に賛成、不平等巡る暴力を恐れる声も

米ニューヨークの郵便局前で行われた億万長者への課税を求める運動。2025年4月15日撮影(Mostafa Bassim/Anadolu via Getty Images)

米ニューヨークの郵便局前で行われた億万長者への課税を求める運動。2025年4月15日撮影(Mostafa Bassim/Anadolu via Getty Images)

20カ国・地域(G20)諸国の大富豪の過半数が、富に対する2%の課税を支持している。英国の富裕層からなる団体「パトリオティック・ミリオネアズUK」が、2000人以上の億万長者を対象に実施した調査から明らかになった。

1000万ドル(約14億8000万円)以上の資産を持つ層は富裕税を支払うべきかとの問いに対し、調査対象者の58%が賛成と答えた。世帯資産が5000万ドル(約74億円)以上と1億ドル(約148億円)以上の層では、それぞれ66%と69%が富裕税を支払うべきだと答えた。一方、100万ドル(約1億4800万円)以上の投資可能資産を持つ回答者に対象を広げると、富裕税を支持しない割合が増えた。5000万ドル以上の資産を持つ人に関しては、ほぼ3分の1が富裕税に「反対」または「分からない」と答えたのに対し、資産1000万ドル以上では、この数字は4割に上った。

パトリオティック・ミリオネアズUKは、英国の億万長者70人以上からなる団体で、富裕層への課税強化と富の公平な分配を提唱している。同じ名称の最初の団体は2010年に米国で設立され、ジョージ・W・ブッシュ政権時代に減税措置の失効を求めてロビー活動を行ったが、この措置はバラク・オバマ次期政権の下で延長された。

スイス東部ダボスで2024年に開催された世界経済フォーラムでは、250人の大富豪が世界の首脳に対し、超富裕層の富に課税するよう呼びかけたが、変化は起きていない。英国に拠点を置く国際支援団体オックスファムの2023年の報告書によると、世界の億万長者の半数は相続税のない国に居住しており、全世界で徴収された税金のうち、富裕税によるものはわずか4%に過ぎなかった。

経済体制の転換を目指す国際団体アース・フォー・オールと米環境保護団体グローバル・コモンズ・アライアンス(GCA)が仏調査会社イプソスと共同で行った調査によると、G20諸国の国民の68~70%が富裕税や高所得税、大企業の利益への課税を支持していた。他の多くの世論調査でも同様の結果が示されている。

パトリオティック・ミリオネアズUKの報告書は、富裕税は資本逃避を招き、結果として経済の衰退を招くという主張を否定している。その上で、多くの富裕層は居住地を変えるつもりはなく、むしろ民主主義を強化し、気候変動のような地球規模の問題と闘い、特に富の不平等な分配を巡る暴力の発生を防ぐことになると考えられる変化を歓迎していると強調した。

極端な富は民主主義に対する脅威

今回の調査対象となった富裕層の4分の3は、十分な資金が確保された公共サービスと機能的な社会基盤が、起業家と強力な経済にとって不可欠だと考えていた。回答者の54%が「極端な富は民主主義に対する脅威」だと答え、72%は「富裕層が政治的影響力を得るために金銭を支払っている」ことを認めた。

世界不平等データベース(WID)が公開した最新のデータによると、2023年には米国の富裕層の上位10%が国の富の70%以上を保有していた。この割合を上回るのはアフリカ、南米、中東の数カ国のみだった。英国ではこの割合は57%で、欧州連合(EU)の59%と同程度だった。これより低い割合の国はほとんどなく、EU圏外の欧州で最も平等に富の分配が行われているのは、ノルウェーの52.6%とアイスランドの56.7%だった。EU諸国の中で富の独占の割合が最も低かったのは、オランダの45.4%とスロバキアの49.4%だった。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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