さらに、人間では難しい領域の分子探索も得意だ。
研究者は経験を持つだけに、研究対象となる遺伝子や疾患に偏りが生まれる傾向が強い。無意識のうちに研究対象から外しがちな「怪しいとは思えない」対象が生まれる、いわゆる認知バイアスの影響が大きいのだ。

しかしDDAIFには認知バイアスはない。発見された標的分子が研究されたことのない新規分子だったのは認知バイアスの影響が強い。

創薬プロセス全体を効率化
標的分子の発見は、新薬が市場に出るまでの最初のステップに過ぎない。この後のステップを経て薬が開発されるまでには、その後約10年を要するとされる。3万個ある対象遺伝子の中から、その候補を選び出すプロセスが効率化されれば、その後段プロセスにはAI導入が進んでおり、新薬開発の全体的なスピードアップや成功率の向上が期待される。
また、DDAIFは標的分子探索だけでなく、既存薬の新しい用途を探る「ドラッグリポジショニング」や、化合物探索、バイオマーカー探索、毒性予測など創薬のあらゆる分野で応用可能といわれる。製薬産業全体のイノベーションに貢献するだろう。
日本発の技術だけに、日本の製薬会社との関係も深い。今後の日本の創薬産業への貢献も期待したい。
日本の医薬品産業は国際競争力の低下が深刻な課題となっている。2011年に世界の医薬品市場で11.6%のシェアを占めていた日本は、2023年には5.2%までシェアを落とした。近年、医薬品の輸入超過は年間4兆円を超えている。
この危機的状況の中、石破首相は2025年6月の官民協議会で「創薬で世界の人々に貢献できる『創薬立国』を目指す」と宣言し、基幹ビジネスとして育成する方針を明確にした。
フロンテオは国内外の製薬企業と共同研究を進めており、この技術応用が進めば、日本発の新薬が世界の医薬品市場において再び存在感を示す日もくるかもしれない。
発見された膵がんの標的分子は今後、東京科学大学で作用機序を把握するための研究が行われる一方、米オクラホマ大学との共同研究で動物実験による有効性確認を目指す。
その上で、将来的にはDDAIFを製薬会社にライセンスアウトする「水平分業」スタイルのビジネスモデル構築を目指すという。


