自転車の事故は後を絶たない。交通ルール無視の不届き者は言うまでもなく、通学中の高校生の自転車にもヒヤヒヤさせられることがある。だが、大阪のヘルメットメーカーの調査が、そんな高校生たちの交通安全対策に寄与する手段を示している。ヘルメットだ。もちろん、ヘルメットは事故の際に物理的に頭部を守る重要なギアだが、それだけではない。交通安全意識にも大きな影響を与えるのだ。
自転車やオートバイ用のヘルメットの製造販売を行うオージーケーカブトは、高校生たちを事故から守りたいという願いを込めて、大阪府、兵庫県、福岡県の希望する高校生に計8000個のヘルメットを寄贈。その後、各府県の警察、教育庁、教育委員会を通じてヘルメットがもたらす効果に関するアンケート調査を行った(回答数4440)。それによると、ヘルメットを着用した高校生たちの意識に大きな変化が見られた。
ヘルメット着用後の安全意識や行動変容について尋ねると、じつに85.2パーセントが「交通安全に対する意識が高まった」と答えた。また、87.9パーセントが「慎重な運転を心がけるようになった」と答えている。いわゆる「身が引き締まる」というやつだろうか。これだけでも、相当な事故防止効果が期待される。事故の際に命が救われるより前に、ヘルメットをかぶるだけでそもそも事故のリスクが大幅に減るというわけだ。
問題は、ヘルメットをかぶることへの拒否感だ。おしゃれが気になる若者たちは、とくに抵抗があるものと察せられる。一部には、頭が蒸れる、恥ずかしいといった意見もあったが、実際に抵抗(課題)があると答えた高校生は10パーセントに過ぎなかった。
理性的な高校生たちは、見栄えよりもヘルメットがもたらす実利を意識しているものと思われる。ヘルメットの着用は有効かとの問いに94.7パーセントは肯定的で、さらに74.5パーセントは自転車に乗るときの安心感が増したと答えている。これらに関連して、「車が横を通り過ぎるときも安心感が増した」、「コケたときヘルメットをしていなかったら頭を直にぶつけていた」、「雨天時に側溝でスリップ、頭から転倒したが無事だった」などの意見が聞かれた。
アンケートに応じた高校生のうち8割以上が「ながらスマホ」が反則金の対象になることを理解していて、2026年の道路交通法改正についても6割以上が知っていた。ただ、中央交通安全対策会議交通対策本部が2022年に定めた「自転車安全利用五則」のことを知る人は2割に満たない。もっともその内容はごく常識的なものなので、ヘルメットをかぶって安全運転を心がけていれば問題はないはずだが。念のため、自転車安全利用五則をここに示しておこう。
自転車安全利用五則
1. 車道が原則、左側を通行、歩道は例外、歩行者を優先
2. 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
3. 夜間はライトを点灯
4. 飲酒運転は禁止
5. ヘルメットを着用



