シンガポールは2025年8月、建国60年の節目を迎える。それに先駆け7月15日、同国のアイコンとなったマリーナベイ・サンズが今後20年を見据えてつくる新たな超高級リゾートの建設の起工式が行われた。
マリーナベイ・サンズの構想がスタートしたのは2005年のこと。当時低迷していた観光客数の増加を目指したシンガポール政府が、IRの導入を決意し、IRライセンスの1つがラスベガス・サンズ社に与えられた。その後のめざましい観光の発展はよく知られるところだ。
今回の新たな超高級リゾート開発の着工は、マリーナベイ・サンズの成功を祝い、新たな20年に向けて、再びラスベガス・サンズとシンガポール政府、官民共同のチャレンジとなる。起工式の壇上で、シンガポールのローレンス・ウォン首相は「20年前に今の繁栄の保証はなく、我々はリスクをとるチャレンジャーだった」と当時を振り返った。
新たな開発の目玉は2つある。一つ目は超富裕層に向けたスイートのみ、全570室の高級ホテル。もう一つは1万5000席規模のアリーナだ。
起工式の壇上では、シンガポールの有名タレントを起用したイメージムービーが上映されたほか、ラスベガスさながらのパフォーマンスなども行われ、経済力一辺倒ではなく、地元発信のコンテンツ力があり、エンターテイメントの拠点として、海外スターがアジアツアーをする際のハブとなれる力があることも発信した。
筆者の取材に対し、ラスベガス・サンズの社長兼最高執行責任者(COO)のパトリック・デュモン氏は、「マリーナベイ・サンズが成し遂げたことに非常に満足しております。我々は、シンガポールで15年間活動し、長期的な投資を行っています。5年、10年、20年という長期的なサイクルで物事を考えており、シンガポールの観光市場を信じています。我々は、ここに投資できる機会をいただけたことにとても感謝しています」と語った。さらに「今回の開発を行うための権利として20億米ドルを支払っています」付け加えた。
マリーナベイ・サンズの敷地は約19haなのに対し、今回の開発では6分の1以下の広さしかないが、その狭さを逆手に取り、限られた人しか訪れることができないエクスクルーシブ感を表現していくという。
デュモン氏は、今後の富裕層を惹きつけるには、1. 他とは全く異なった体験、2. ソーシャルメディアで受けるデザイン、3. ユニークでフレッシュであることの3要素が重要だと考えており、屋上の展望台「スカイループ」は、それらを兼ね備えたこれまでにない体験型のものを目指す。



