競合との差別化とFableの強み
マイクロソフトとパランティアにそれぞれ1年間在籍していたジャンと、共同創業者のリャオは、AIを活用したセキュリティ分野で実績を持っている。またAbnormalの創業当初、正当なメールとそうでないものをAIで判別するソリューションの販売に2人とも関わっていた。Abnormalには、ユーザーに安全なメールの使い方をナビゲートするAIエージェントもある。
しかし、ジャンはFableがAbnormalと競合関係にあるとは思っていない。「私たちはメールなどの特定の問題に対処しようとはしていない。人間が持つ脆弱性の問題に取り組んでいる」と彼女は話す。
Fableの主な競合は、「サイバーセキュリティ教育」分野の大手のひとつ、KnowBe4だ。同社は2022年、プライベート・エクイティのVista Equity Partnersに46億ドル(約6808億円)で買収された。
Greylockの投資家でありAbnormalにも出資しているサーム・モタメディは、KnowBe4の研修資料が静的なもので、Fableのように社員のニーズに応じて変化するものではないと指摘した。「私はFableがはるかに大きな存在になれると思っている」と語る彼は、Fableの年間経常収益(ARR)が10億ドル(約1480億円)を超える規模に成長可能だと考えている。「それは、独立した上場企業になるための道筋だ」。
金融、医療、物流、テック業界の顧客向けに製品を構築
Fableは、これまで世に出てこなかったが、過去1年間で金融、医療、物流、テック業界の顧客向けに製品を構築してきた。同社の初期顧客には、住宅ローン提供会社Pennynacや、ソフトウェア企業Genesysなどが含まれている。
卸売企業C&S Wholesale Grocersの最高情報セキュリティ責任者(CISO)、アーヴィン・バンサルは、自身の業界でランサムウェア攻撃が相次ぐ中、社員にリスクを理解させる必要性を感じて、Fableの導入に踏み切ったという。その結果、FableのAIツールがすぐに使えるもので、短く的確なコンテンツを次々に生み出す点に感銘を受けて全社に展開した。そして、導入から1週間以内にポジティブな反応が相次いだという。
「コンテンツが素早く作成され、素早く配信される点にAIの力を実感した」とバンサルは語った。彼の会社では、フィッシングへの警戒心が高まり、危険なクリックが減り、フィッシング報告件数も目に見えて増えたという。
米民主党のセキュリティ維持も支援
ジャンによると、Fableは米国の政治団体にも協力しており、昨年の大統領選を前にした時期に民主党全国委員会(DNC)のスタッフ向けにセキュリティのブリーフィングを実施したという。「民主党は、選挙には負けたかもしれないが、大規模な情報漏洩を起こさなかった。それは私たちにとっては勝利だった」と彼女は語った。


