86%の「潜在顧客」をどう取り込むのか?
ここで課題となるのは、今もなおプライベートジェットに手を出していない86%の潜在顧客をどう取り込んでいくかだ。ギャラガーは、「今後の20年間で約80兆ドル(約1京1840兆円)の資産が相続されると見込まれている」と指摘した。
彼によると、次世代の富裕層は、親の世代よりも「シェアエコノミー」モデルに対して抵抗が少ないという。例えば、ジェットカード(一定時間分のプライベートジェットの利用を前払いで購入する利用形態)、共同所有などだ。
実際、新たな富の多くはテクノロジー系の事業から生まれており、NetJetsの市場シェアが最も高いのはシリコンバレーだ。ギャラガーはCNBCに「テックマネーはシェアエコノミーに投資している」と語った。
新規顧客を惹きつける要因と市場開拓の課題
プライベートジェットの利用を検討しているものの、まだ実際に使っていない層を対象に行った調査では、63%が、プライベートジェットの利点を「一般の航空会社と比べてドア・ツー・ドアの所要時間が短縮できる」と回答した。また、46%は「自分の最寄りの空港が使える」とし、31%は「乗り継ぎなしの直行便で目的地に行けること」を挙げた。さらに約30%は「ペットと一緒に移動できる点」をメリットに感じており、38%は「長距離の車移動の代わりになる」と回答した。こうしたニーズの高まりを受け、さらに多くのプライベートジェットの企業が「ラストマイル」に対応する新たなサービスを打ち出している。
プライベートジェットに手が届く層を、どう引き込むかは、常に業界にとっての課題であり続けている。
テロの脅威や新型コロナウイルスの流行は、「混雑した空間を避けたい」という動機から新たな顧客層をプライベートジェット市場に呼び込んだ。数日間も再予約ができないような航空会社のシステム障害が起きると、一時的に需要が急増する。また、NetJetsが考案した共同所有制、1999年にSentient Jet(現在はNetJetsに統合)が開発したジェットカードなど画期的な商品が登場したことで、プライベートジェットは、以前よりも手軽でアクセスしやすくなった。ただし、格安の選択肢はメディアで注目を集めやすい一方で、期待通りのサービスを提供できず、ビジネスモデルが持続しないケースも少なくない。
Wheels UpとRealJetが狙う新市場
そうしたなかWheels Upは、筆頭株主のデルタ航空を通じて、新規顧客の獲得を目指している。同社は、デルタ航空の営業部隊を活用して、プライベートジェット未経験の法人顧客を対象に営業をかけているほか、空港のターミナルやラウンジで広告を展開し、認知度の拡大を図っている。
かつてMarquis Jet Partners(2010年にNetJetsへ売却)、Wheels Upを立ち上げたケニー・ディクターは先日、この業界への復帰を表明した。彼は今回、昨年立ち上げたスポーツ・エンターテインメント系プラットフォームの派生事業として、RealJetを始動させている。
ディクターは、Marquis Jetを通じてこの市場の拡大に貢献した人物として広く知られている。同社は、通常は「5年間で年間50時間」という契約が前提だったNetJetsのサービスを、「25時間分の前払い」という形で提供することで、新規顧客を取り込んだ。またWheels Upでは、コスト効率に優れたKing Airのターボプロップ機を使った会員制プログラムを提案したことでも注目を集めた。
2200万人以上のミリオネアのうち、定期的な利用者は15万人程度
今回ディクターが描くのは、VIPイベントへの参加と組み合わせることで、友人やビジネス関係者と快適かつスタイリッシュに移動できる手段としてプライベートジェットを提供し、初めての利用者を取り込む戦略だ。
彼の新たなプロジェクトReal SLXは、すでにBetMGMやFanDuelと提携を結んでいる。チャーターブローカー事業の立ち上げに際し、ディクターはこう語っている。「米国には資産が100万ドル以上のミリオネアが2200万人以上も居るが、そのうちプライベートジェットを定期的に利用しているのはせいぜい15万人程度だ。この大きな『空白地帯』にこそ、私たちが新しい顧客を呼び込むチャンスがあると考えている」。


