経営・戦略

2025.07.31 08:00

米国2200万人の「ミリオネア」が狙い プライベートジェット企業の争奪戦

NetJetsの社長のパトリック・ギャラガー(Photo by Bryan Bedder/Getty Images for The New York Times )

NetJetsの社長のパトリック・ギャラガー(Photo by Bryan Bedder/Getty Images for The New York Times )

世界のプライベートジェットの需要は、新型コロナウイルスのパンデミックを受けて急増し、2022年に直近のピークを迎えていた。この分野の最大級のサービス提供会社であるNetJets(ネットジェッツ)、Flexjet(フレックスジェット)、VistaJet(ビスタジェット)の幹部らは、この市場でそれ以降の2年間続いていた小幅な需要の減少を経て、今後の見通しを楽観視している。

パンデミック後の力強い回復

業界誌のAviation Weekによれば、この3社の業績はすでに上昇を遂げている。今年3月から5月にかけての機体の総時間利用率は、2019年の同期間との比較でFlexjetが146%増、VistaJetが115%増、そしてこの市場の最大手であるNetJetsが56%増となっていた。

NetJetsの社長のパトリック・ギャラガーは、CNBCのインタビューで、過去5年間でこの業界が成長したにもかかわらず、プライベートジェットの潜在市場は、ほとんど手つかずだと語った。

「パンデミックを受けてこの市場は拡大したが、その伸び幅が40%だとしても、実際にプライベートジェットを利用している顧客は、依然として潜在市場の14%に過ぎない」とギャラガーは語った。彼はまた、2020年のマッキンゼーの調査を引用し、パンデミック前にプライベートジェットを定期的に利用していた人々の割合が、「経済的に利用可能な層のうちのわずか10%に過ぎなかった」と指摘した。

バークシャー・ハサウェイ傘下のNetJetsは今年、約90機の新型プライベートジェットの納入を受ける見通しだ。同社は現在、テキストロン・アビエーションやエンブラエル、ボンバルディアから1700機以上を購入するためのオプションを保有している。

ギャラガーは具体的な数字の提示は避けたものの、「今後の需要の見通しに関しては、市場の変動や不確実性、関税への懸念があるなかでも、減速の兆しはまったく見られていない」と語り、さらにこう続けた。

「私たちはあらゆる主要な先行指標を綿密に監視している。既存顧客のフライト利用はどれくらいか? 予約のリードタイムは短くなっていないか? 通常通りの旅行パターンで予約しているか? 行き先に変化はあるか? 昨年と比べて欧州への渡航は減っているか? このような点を注視しているが、今のところNetJetsのビジネスに減速の兆しは一切見られない」。

WingXのデータによれば、米国のプライベートジェットの便数は、関税の発表前には前年比3.4%の成長率で推移していたが、その後は前年比4.1%の伸びへと加速した。また、メモリアルデー(5月25日)の週末には、米国内のプライベートジェットの便数は前年比で16%増加した。

VistaJetのトーマス・フロール会長(Photo by Nora Tam/South China Morning Post via Getty Images)
VistaJetのトーマス・フロール会長(Photo by Nora Tam/South China Morning Post via Getty Images)

VistaJet、Flexjet、NetJetsの3社とも拡大を計画

世界展開で他社を凌ぐVistaJetのトーマス・フロール会長は、Spears Magazineの取材に対し、より多くの富裕層をプライベート機の市場に惹きつける可能性について、「潜在市場は非常に大きい。しかも通常は国内総生産(GDP)の約2倍のペースで成長している」と語った。

今年初めにFlexjetは、新たに70億ドル(約1兆円)相当のエンブラエル製のプライベートジェットを確定発注したと発表していた。同社のマイク・シルヴェストロ共同CEOは、2031年までに保有機数を現在の2倍の600機以上に拡大する見込みだと述べた。

さらに、NetJetsは航空機管理部門も含めて約1100機を運航しており、航空機保有数の規模はアメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空に並ぶ水準にある。

次ページ > 何が成長を牽引しているのか?

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事