不都合な真実その2:企業文化の中に深く埋め込まれている
静かな解雇は、上司個人の問題というだけなく、組織自体に問題があるケースもある。会社の上層部や人事部門が、業績に関する話し合いを避けるため、あるいは、法的リスクを回避するために、静かな解雇というアプローチを利用していて、上司はただ、上の指示に従って対応しているのかもしれない。この場合は、単なる個別の問題ではなく、そうしたやり方が企業文化の中に埋め込まれているということだ。
会社のイメージを守りながら従業員を辞めさせられる
経済の先行きが不透明な時代には、目立ったかたちで大量解雇に踏み切って混乱を招くよりも、「裏でひそかに人員を削減しよう」と考える企業も出てくる。静かな解雇は新たなトレンドだと思われるかもしれないが、組織行動学が専門のロンドン・ビジネス・スクール臨床教授ベン・ハーディによれば、ずいぶん前から行われていたようだ。
企業にはかつて、「駐車場での会話(car park conversations)」と呼ばれるやり方があった。例えば、上司が部下に、「ちょっと外で話さないか」と何気ない口調で声をかける。そして、選択肢を2つ提示する。1つは「減給を受け入れておとなしく辞める」、もう1つは「おそらく乗り越えられないであろう人事評価の面談を受ける」。いずれにせよ目的は同じで、事を荒立てずに部下を辞めさせようとしているのだ。
ハーディによれば、大々的な解雇を実施すると、「会社は大きな1つの家族だ」という幻想が壊れてしまう。その一方で、静かな解雇なら、会社のイメージを守りながら従業員を辞めさせることができる。


