欧州

2025.07.29 11:30

欧州は独自に核兵器を保有できるのか? 米国の「核の傘」への信頼が揺らぐ中

南太平洋ポリネシアのムルロア環礁で行われたフランスの核実験。1971年撮影(Galerie Bilderwelt/Getty Images)

南太平洋ポリネシアのムルロア環礁で行われたフランスの核実験。1971年撮影(Galerie Bilderwelt/Getty Images)

ロシアがウクライナへのミサイル攻撃を激化させ、西側諸国をプルトニウム爆弾で攻撃すると脅す中、欧州では、ロシアの新たな侵攻に対する究極の盾として、自国に核兵器を配備すべきか検討し始めた首脳もいる。

第二次世界大戦の痕跡がまだ生々しく残っていた頃、東欧の制圧を目指すソビエト連邦の戦車が同地域を行き交う中、米国は西欧の民主主義国を防衛するために核の傘を広げてきた。これらの自由主義諸国はソ連の拡張主義から互いを守るため、北大西洋条約機構(NATO)を設立した。

しかし、加盟国1カ国への攻撃に対する集団防衛を義務付けるNATO条約第5条を順守するかを巡り、米国のドナルド・トランプ大統領は矛盾した発言を繰り返しており、この「米国による平和」が根底から覆えされようとしている。

英首都ロンドンに拠点を置く国際戦略研究所(IISS)の核兵器専門家アレクサンダー・ボルフラス博士は、ロシアが国境を越えて進軍し、米国が同盟国を見捨てる可能性も出てきたことで、欧州諸国が原子爆弾の開発を検討する動きが広がっていると警告する。

こうしたロシアの帝国主義による侵略がもたらす危険性の高まりを受け、オランダのハーグで6月に開かれたNATO首脳会合で、加盟国は2035年までに国内総生産(GDP)に占める国防費の割合を5%に引き上げることで合意した。NATOのマルク・ルッテ事務総長は記者団に対し、「ドイツの国防相をはじめとする軍の高官や情報機関の関係者らが数週間前、今われわれが国防費を増額しなければ、3年後、5年後、7年後にロシアがわれわれを攻撃するだろうと話しているのを耳にした」と述べた。

地球上で最も巨大な核兵器を保有するロシアの攻撃を抑止するために、欧州諸国は実際に核兵器を製造することができるのだろうか? ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のソ連再建の野望に対抗し、信頼に足る防衛手段を構築するために不可欠な核弾頭や戦闘機、長距離ミサイルで、欧州諸国は競うことができるのだろうか?

筆者の取材に応じたボルフラス博士は、欧州連合(EU)諸国が実際にウラン235(訳注:核分裂を起こすウランの同位体で原子力発電や核兵器の燃料になる)を入手していることを踏まえ、ミサイル技術と核弾頭搭載可能な軍用機の設計に関する専門知識を活用し、抑止力を構築する可能性について考察した。

北欧のスカンジナビア半島から南欧の地中海まで広がる新たな欧州の防衛連合は、3年以内に米国のマンハッタン計画(訳注:第二次大戦中の米国の原子爆弾開発計画)に匹敵する速さで核弾頭を備蓄し、現在米国が保有する10分の1程度の核兵器を構築するかもしれないと同博士は予測している。

同博士によれば、欧州には、世界有数の核大国になるだけの先端技術の知識や部品、科学者や技術者のほぼすべてがそろっているという。ドイツとオランダはともにウラン濃縮事業を行っており、理論的には将来の兵器用に核分裂性物質を精製することができる。ボルフラス博士はさらに、スウェーデンがプルトニウム抽出計画を復活させる可能性があるとみている。同国は拡大する核兵器運搬システムの中でドイツと共同開発したユーロファイター戦闘機と連携できる最先端のグリペン戦闘機を開発中だ。第二次世界大戦中に世界初の弾道ミサイルであるV2ロケットを開発したドイツは、スウェーデンやイタリアの設計者と協力し、別の兵器プラットフォームを完成させるかもしれない。ボルフラス博士はまた、欧州のどこからでもロシアの首都モスクワを狙える核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発する上で、イタリアのベガロケット開発の知識が役立つだろうとみている。

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翻訳・編集=安藤清香

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