欧州

2025.07.29 11:30

欧州は独自に核兵器を保有できるのか? 米国の「核の傘」への信頼が揺らぐ中

南太平洋ポリネシアのムルロア環礁で行われたフランスの核実験。1971年撮影(Galerie Bilderwelt/Getty Images)

では、この新たな連合のどの国が、ロシアの侵略から防衛するための爆撃機やミサイルに装備する高度な核弾頭を設計できるのだろうか?

advertisement

英国とフランスはすでに核弾頭を開発しているが、いずれも欧州の抑止力の構築計画を主導する可能性は低いとボルフラス博士は指摘する。両国はともに核不拡散条約(NPT)の締約国であり、その第1条にはこう書かれている。「本条約を締約した核兵器保有国は、核兵器やその他の核爆発装置をいかなる受領者にも移転しないことを約束する」。同博士は、条約のその他の締約国も同様に「いかなる形であれ、核兵器の非保有国が核兵器やその他の核爆発装置を製造したり、取得したりすることを支援、奨励、誘導しない」ことを誓約しているとした上で、次のように説明した。「これにより、英国とフランスが共有できることには制限がある。とはいえ、当然、同盟国の領土を防御するような広範な抑止任務を自国の兵器に課すことはできる」。だが、ドイツとポーランドが英国とフランスの核の盾の下に避難することを要請したにもかかわらず、英仏とも今のところ、自国の核の傘を拡張することを正式に承認していない。

原子爆弾を製造するための欧州の計画は、英国とフランス以外の物理学者が率いる可能性が高く、この研究で達成された進歩を試験するために、スーパーコンピューター上で実行される高度な次世代シミュレーションソフトウエアに頼ることになるだろう。

ボルフラス博士は、NPT締約国がこの計画に参加する場合、同条約から脱退しなければならないと指摘する。その上で、欧州諸国が次々とNPTから脱退すれば、核軍縮を積極的に推し進めていた欧州が、強硬な核保有国の象徴へと急速に変貌していくだろうと述べた。

advertisement

核兵器の備蓄が進むにつれ、この核連合に加盟する同盟国は、核兵器を使用するための不可欠な前提条件を明記した共同の原則に合意するとともに、先制攻撃をした相手に対する報復措置の開始を即座に決定できる指揮統制センターを形成しなければならなくなるだろう。核保有国が台頭し、NPTを放棄する国が増えれば、世界中に波及する新たな核軍拡競争の引き金になるかもしれない。

しかし、今日の欧州で原子爆弾が実際に製造される可能性はどれほどあるのだろうか? 最終的な決断は、米国がNATOから撤退し、核防衛を欧州全域に拡大する動きに左右されることになるのだろうか?

ボルフラス博士は、次のように答えた。「欧州に新たな核兵器が配備される可能性は、現時点では低い。欧州を批判する割には、トランプ政権はこれまでのところ、同盟国に対する核の保証に疑問を呈してはいないからだ」

だが、核抑止力計画を活性化させるきっかけは、一瞬のうちに生まれるかもしれない。「もし将来、欧州が米国の核の保護を受けられなくなったら、独自に核兵器を保有することも選択肢の1つになるだろう」。同博士は、もし欧州諸国がロシアを自国の国境内に封じ込めることを目的とした核兵器を備蓄した場合、いずれはこの核の傘をウクライナにまで拡張し、ロシアの侵攻を速やかに食い止めようとするかもしれないと考えている。

SEE
ALSO

経済・社会 > 政治

外交か軍事力か? 核兵器の拡散を防止する上で最も効果的なのは

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事