夏の風物詩、花火大会。今年もすでに全国各地で行われているが、人気の花火大会となると人出が多く、安心確実に観られるよう有料観覧席を設けるケースが増えている。帝国データバンクによると、2025年に国内の夏季に開催される主要106花火大会(動員客数10万人以上)のうち、約8割に当たる83大会で観覧エリアに有料席を導入していることがわかった。これは、前年の80大会から3大会(2大会中止により実質5大会が新規導入)増えており、調査開始の2023年以降で最多となっている。

価格面では、前回から有料席を値上げした大会は42と、価格据え置きの36大会を上回り、価格引き上げの傾向にある。
料金を見てみると、1区画(席)あたり、もっとも安い「一般席」の平均は5227円で、前年に比べて1.8%の増加となったものの、上昇幅は鈍化傾向にある。
一方、最前席や広々としたテーブル席、ソファ席、グランピングシート席など、付加価値の高い「プレミアム席」の平均は3万6193円に達した。これは前年より2422円アップの7.2%増となっており、一般席よりも値上げ幅が大きい傾向だ。

なお、調査対象の席種でもっとも高い有料席は「2025 松江水郷祭湖上花火大会」(島根県松江市・8月2日~3日開催)で販売された「VIPテーブル席」(定員4名)の12万円であった。
帝国データバンクの分析によると、観覧客誘導や安全確保に不可欠な警備員の人件費、花火費用など、物価高騰による運営コスト増が大会維持を圧迫。これを背景に、有料開催に踏み切るケースが多数見られた。一般席とプレミアム席の平均価格差は6.92倍に拡大し、2019年以降で最大。市場の二極化が進む。
テーマパーク同様、花火大会でもチケット価格の高騰化傾向が顕著だ。しかし、プレミアム席の最高額は2023年の30万円から12万円へと半減した。平均的な価格設定と比較して割高な観覧席は、豪華なサービスやプレミアム感で話題性を喚起する一方で、販売に苦戦するケースも散見される。廉価な一般席であっても、割高感を覚える席は売れ残る大会もあり、観覧客の高額席に対する受容度にはばらつきがある。
「地元なのに見られない」といった不満の声も上がり、大会運営側は、適正な有料観覧席の設置と地元への配慮という、両立が難しい課題への対応を迫られるだろう。
出典:帝国データバンク「2025年主要花火大会有料席導入・価格調査」より



